「元」王子は無関心

 ミスト王国の内乱が終結してから数日後。ミスト王国の代表者となったノルドとフランメ王国、アックア公国、アイゼン王国、ソル帝国の四ヵ国の使者達による、この最近に起こったいくつもの事件に関する賠償を決める話し合いが行われた。


 そして話し合いの結果、ミスト王国はフランメ王国を初めとする四ヵ国の共同管理地域とされ、その監督はノルドが務めることとなる。ミスト王国の国民達はこれまでクリストミスが出す強硬策や、度重なるアイゼン王国やスチム公国との戦いに疲れていたこともあってか、この結果に反対意見を出す者は僅かであった。


 ミスト王国が四ヵ国の共同管理地域となった報せは先に本国に帰還したサイ達にも伝わり、その中でミスト王国の王族であったクリスライドの反応はというと……。


「ふ〜ん。まぁ、いいんじゃないですか?」


 と、非常にどうでもよさそうな反応であった。


 クリスライドが今いるのは、居候させてもらっているフランメ王国の王都にあるサイの屋敷の広間である。広間にはクリスライドの他にサイとピオンを初めとする四人のホムンクルスの女性達、そしてクロエとミスト王国からついてきたクリスライドの部下数名がいた。


「いえ、あの……? クリスライド様、それだけなんですか? 本国が他国に支配されたのも同然なんですよ?」


 クリスライドの言葉にクロエは戸惑った表情で彼に話しかける。クリスライドの部下達も同じような戸惑った視線をクリスライドに向けているのだが、それでも彼はやはりどうでもよさそうな表情なまま返事をする。


「『元』本国だよ。俺達はもうフランメ王国に亡命して、それを正式に認められたんだから、もうミスト王国なんて関係ないよ。それに元々ミスト王国はスチム公国を支配しようと何度も何度も戦いを仕掛けていて、こうなったのもそれが原因だ。それなのに逆に支配されたら被害者顔をして文句を言うなんて変じゃない?」


「そ、それは……」


 クリスライドの言葉にクロエも、他の部下達も何も言えなくなる。


 今回の任務によりクリスライド達は正式にフランメ王国の国民として受け入れられることが決定しており、更にクリスライドが今言ったことは全て正論であった。


「そう言えばお義兄さん? 国王を含めたミスト王国の王族や、あの内乱で国王についた兵士達ってどうなったんですか?」


 クリスライドは返す言葉を失い気まずそうな表情となったクロエ達から視線をサイに移して気になっていたこと聞く。するとその質問にサイではなく彼の隣にいたピオンが答える。


「ミスト王国国王クリストミスはアイゼン王国の牢獄に送られたそうですよ。そして他の王族は全て国外へ逃亡して、王族に協力していた貴族や兵士達は四ヵ国の指示でミスト王国の中枢から追い出されたと聞いていますよ」


「そうですか。それだったら馬鹿をやらかす人間がいなくなって、一先ずは安心ですね。ミスト王国が今また何か変なことをしでかすと、俺達の立場が悪くなりそうでしたから」


 安心したようにそう言うクリスライドの態度からは、彼が本当に生まれ故郷であるミスト王国に関心を持っていないことがはっきりと現れていた。

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