忠告と指令

 ブリジッタとザウレードが合同部隊に参加する理由を説明した後、バルベルトとフランベルク三世は隊員達に激励の言葉を贈り、最初の任務が決まるまで待機ということになってその場は解散となった。


 それから数時間後、サイとブリジッタ、ジェラードにマリーの合同部隊に参加する四人のゴーレムトルーパーの操縦士はアックア公国の王宮の一室にいた。


 今この部屋にいるのは二十歳ほどの男女が四人だけ。しかしこの全員がその気になれば小国の一つを滅ぼせる強大な力を持っていると考えると異様な光景に思えた。


「まさかブリジッタがザウレードの操縦士に選ばれるなんて思わなかったな」


「はい! 私も初めてお父様から聞かされた時には夢かと思いました。今でも夢のような気持ちです!」


 サイが話しかけるとブリジッタは興奮気味に答える。子供の頃からゴーレムトルーパーに憧れてきた彼女にとってこれ程嬉しいことはないだろう。


「凄い喜んでいるな。まぁ、気持ちは分かるけど……」


 興奮するブリジッタを見て呟くジェラードだったが、彼には彼女の気持ちがいくらか理解できた。惑星イクスの武人にとってゴーレムトルーパーの操縦士になるというのは誰でも一度は見る夢であり、ジェラード自身も正式にゴーレムトルーパーの操縦士となれた時は喜びを隠しきれなかった。


「ブリジッタ様」


 ジェラードが過去のことを思い出していると、それまで無言であったマリーがブリジッタに話しかける。


「ゴーレムトルーパーの操縦士になれたことを喜ぶ気持ちは分かりますが、お気をつけください。貴女が乗る機体は今だ多くの人々の恨みと悲しみを背負っていることを」


 王族と貴族の力が強いソル帝国は、黒龍盗賊団に使われていたザウレードによって最も被害を受けた国であった。そのソル帝国から来たマリーに忠告されてブリジッタはザウレードのかこを思い出し、受かれていた表情を浮かべていた顔を俯かせる。


「あっ……。そのすみませんでした」


「いえ。ブリジッタ様には何の罪もありませんから。……どうやらザウレードの件で気が立っていたみたいです。こちらこそすみませんでした」


 謝罪をするブリジッタにマリーもまた気まずそうな顔を浮かべてそう声をかける。それにより会話が途絶え、部屋の空気が沈んだ感じになった時、部屋の扉を開いて一人の人物が入ってきた。


「あれ? 皆どうしたの? 暗い顔をして」


 部屋に入ってきたのはクリスナーガで、場の空気を変えたいと思っていたサイは僅かに安堵した表情で自分の婚約者に声をかける。


「いや、何でもないよ。それよりどうしたんだ?」


「どうしたも何も、フランベルク三世陛下とバルベルト陛下からの指令を伝えに来たのよ」


『『………』』


 クリスナーガの言葉にサイだけでなく、他の三人の操縦士達も真剣な表情となり彼女を見る。四人の操縦士達の視線を集めたクリスナーガは口元に笑みを浮かべて言った。


「合同部隊の初任務よ」

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