初任務の内容

「初任務か……。行き先は一体どこなんだ?」


「ソル帝国よ」


「ソル帝国……」


 サイに聞かれてクリスナーガは合同部隊の初任務で向かう国を口にすると、それを聞いたマリーが何かを考える表情となる。


「ソル帝国か。俺は行ったことはないけど、そこで一体何をしたらいいんだ?」


「ゴーレムトルーパーを含めた軍隊との模擬戦らしいわ」


 ジェラードに聞かれてクリスナーガは自分達が所属する合同部隊の初任務の内容を端的に説明するのだが、意外な内容にジェラードとサイが少し驚いた表情となる。しかしマリーだけは驚いた様子はなく、むしろ納得したように頷いていた。


「模擬戦? 一体どうしてそんな事をするんだ?」


「ソル帝国にはまだこの合同部隊を認めていない貴族や軍人が大勢いるからよ」


 サイの疑問に答えたのはクリスナーガではなく、ソル帝国から来たゴーレムトルーパーの操縦士であるマリーだった。


「最初、ソル帝国はこの合同部隊に参加するつもりはなかったのよ。合同部隊なんか作らなくても自国の問題は自国で解決できるって。ソル帝国の貴族や軍人のほとんどはこの意見だったけど、皇帝陛下が合同部隊の参加に賛成して、それで唯一この合同部隊に肯定的に見えた私がここに送られてきたのよ」


「肯定的に見えたって……。それじゃあ、もしかしてマリーってば本当はこの合同部隊には反対だったのか?」


 マリーの話に気になる点があったジェラードが口を挟むと、それに対して彼女は首を横に振った。


「別に賛成でも反対でもないわ。なにしろ四ヵ国のゴーレムトルーパーと兵を出した合同部隊だなんて初めての試みだから、本当に使い物になるかどうかこれから見極めるつもりよ。賛成するか反対するかはその後ね」


 ジェラードの疑問にマリーが答えた後、次は同じく彼女の言葉に気になる点があったサイが話しかける。


「俺からも聞いてはいいか? マリーが唯一肯定的に見えたって事は、ソル帝国の他のゴーレムトルーパーの操縦士は……?」


 サイの言葉にマリーは首を縦に振って答える。


「いいところに気がついたわね、サイ? そうよ。私以外のソル帝国の操縦士は全員、この合同部隊に反対よ。だから多分こうして合同部隊が発足してもソル帝国では不満の声を上がっていて、今回の任務はそれを黙らせる事が目的なのでしょうね」


 そこまで言ってマリーがクリスナーガの方へ視線を向けると、それまで黙ってゴーレムトルーパーの操縦士達の会話を聞いていたクリスナーガが頷く。


「そういうこと。話が早くて助かるわ」


 つまり、合同部隊とソル帝国のゴーレムトルーパーを含めたソル帝国の軍隊で模擬戦をする事で、未だに合同部隊に否定的な大勢の貴族や軍人に合同部隊の力を知らしめる。


 マリーの話を聞いてこの場にいる全員が初任務の内容とその意味を理解すると、マリーは真剣な表情となってブリジッタを見る。


「ブリジッタ様。先程も言いましたが、貴女が乗るザウレードはソル帝国で大きな恨みを買っています。模擬戦とは言え何が起きるか分かりませんから注意してください」


「は、はい。分かりました」


 マリーからの注意にブリジッタは緊張した表情でそう答えるのであった。

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