出発前
「とにかく初任務については理解できた。それで模擬戦はいつの予定なんだ?」
「模擬戦の準備は私達がソル帝国に到着してからされるそうよ。それで三日後に出発するようにって。……ああ、それと他の隊員達にはピオン達が初任務について説明しているわ」
ジェラードの質問に答えた後でクリスナーガは、今ピオン達が他の合同部隊の隊員達のところへ行っていることを思い出しサイに話す。
「ピオン達が? 一体どうして?」
「伯父様とバルベルト陛下からの指示よ。私の『瞬動』の異能とピオン達の『通心』の力だったら連絡係にはピッタリでしょう?」
クリスナーガに説明されてサイは納得する。一度行った場所なら一瞬で移動できるクリスナーガと、四人の間だけなら距離を無視して意思を共有できるピオン達ならば確かに連絡係にはこれ以上ない人材で、その力を上手く活用できれば部隊の動きは通常の部隊とは比べ物にならないくらい円滑になるだろう。
「? 一体どう言うこと?」
「どうしてクリスナーガとピオン達に連絡係に向いているんだ?」
「ああ、それは……」
事情を知らないマリーとジェラードに、サイがクリスナーガの異能とここにはいないピオン達四人のホムンクルスの女性だけが持つ能力について説明をする。すると彼女達の力の意味を正しく理解したマリーとジェラードの二人は驚きの表情を浮かべる。
「瞬間移動ができる異能と遠く離れた相手に自分の意思を伝える力か……。それは凄いな。部隊を運用するのに理想的じゃないか」
「そうね。伝令を出すよりずっと情報が盗まれるリスクが低くて、情報が伝わるのが早いわ。それにピオンさん達の力ならゴーレムトルーパー同士の連携だってやり易くなるわ」
ジェラードが感心したように呟くと、マリーがそれに頷き自分の考えを口にする。
現代のゴーレムトルーパーは基本的に単独で行動するもので、ゴーレムトルーパー同士が連携する場面など巨大なモンスターと戦う以外ほぼ無い。これは人間同士の戦いではゴーレムトルーパー一機で事足りる他に、ゴーレムトルーパーの連絡手段が外部音声機能しかないという理由からなのだが、もし合同部隊に参加しているゴーレムトルーパーにそれぞれピオン達が一人ずつ乗り込めば、ゴーレムトルーパー同士の連携は格段にやり易くなるだろう。
一機だけでも強大な力を持つゴーレムトルーパーを複数、それを効率的に動かす。これがどういう結果を生むかを考えてマリーが額に一筋の冷や汗を流すと、そんな彼女の考えを読んだクリスナーガが頷く。
「伯父様もバルベルト陛下もその事を考えて私とピオン達を連絡係に任命したってわけ」
「そういう事ですか。でしたら後は物資の運搬ですけど、それはドラン……いえ、サイ様がいれば問題はありませんね」
クリスナーガとピオン達が合同部隊の連絡係になった理由を理解したブリジッタは、ソル帝国に出発する残った問題、物資の運搬について口にしてそれを聞いたジェラードとマリーが首を傾げる。
「サイが? 確かに物資の運搬の準備はしないといけないが、どうしてサイがいれば問題ないんだ?」
「もしかしてサイさんの異能が関係しているの?」
「そうだ。俺の異能は『倉庫』の異能と言って、生き物以外の物なら何でも異空間に仕まうことが出来るんだ。異空間にどれだけの物が入るかは試した事がないけど、以前三体のゴーレムトルーパーを異空間に入れて運んだことがあるぞ」
『『………!?』』
サイが自分の異能の説明をするとマリーとジェラードは再び驚いた顔となり、その直後に二人ともかなり真剣な表情でサイを自分達の国にスカウトしようとするのだった。
そしてソル帝国へ向かう準備はサイ達の異能によって速やかに完了し、合同部隊は三日後ソル帝国へと出発した。
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