模擬戦開始
「ザウレードか……。まさかこのような形であの忌々しいゴーレムトルーパーと戦う日が来るとは……」
ソル帝国側の四体のゴーレムトルーパー、その内の一体の操縦室で操縦士のミッシェルは複雑な表情で呟いた。
「あの機体さえなければバーナードは死ぬことはなかった……」
バーナードとは今は亡きマリーの父親の名前である。ミッシェルはゴーレムトルーパーのナノマシンの力で外見の若さを保ち三十代前半に見えるが、実際は外見よりずっと歳上でバーナードは彼の後輩であった。
「ザウレードを合同部隊に使用する理由は理解できた。しかし納得はできない。その上マリーをザウレードと同じ部隊に入れるとは……」
マリーが新しくゴーレムトルーパーの操縦士となり、ソル帝国のゴーレムトルーパー部隊「大いなる光」に入隊してからミッシェルは、後輩の娘である彼女の指導を自ら買って出た。その為マリーはミッシェルにとって後輩の娘であると同時に自らの教え子であり、その彼女に多大な負担をかける合同部隊に不満を懐いていた。
もし今回の模擬戦で合同部隊の戦いぶりに納得がいかないところがあれば、ミッシェルは罰則を覚悟で合同部隊に参加するソル帝国側の人員を選び直してもらうよう皇帝陛下に直訴するつもりだった。そしてもしその意見が通った時は、マリーの代わりに自分が合同部隊に参加しようと考えた時、合同部隊の開始を告げる空砲の音が草原の空に響き渡った。
「時間か……。総員、攻撃開始!」
今回模擬戦に「大いなる光」の隊長であるデオンティーヌは参加しておらず、四体のゴーレムトルーパーの指揮はミッシェルに任されている。その彼の号令を受けてソル帝国側の四体のゴーレムトルーパーは、一斉に合同部隊側の四体のゴーレムトルーパーへ向かって駆け出した。
「向こうにはマリーがいる! 恐らく私達の基本戦術は奴らに知られ、何かしらの対策を練っているだろう。総員、何が起きても冷静に対処しろ!」
『『了解!』』
ミッシェルが外部音声で隣を走る三体のゴーレムトルーパーに指示を出すと、三体のゴーレムトルーパーも外部音声で返事をしてきた。
マリーは非常に真面目な性格だ。たとえ内心では納得がいってなくても、それが任務である以上は合同部隊に自分がいたソル帝国のゴーレムトルーパーの戦術を伝えているのがミッシェルには分かった。
そこから相手がどの様な対策をしているのかとミッシェルが考えていると、合同部隊から一機のゴーレムトルーパーがこちらに突撃して来て、それを見た彼は思わず声を上げた。
「あれは……マリー!?」
一機だけ突撃してきたゴーレムトルーパーはマリーの機体であった。
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