攻撃開始

「他のゴーレムトルーパーは何処に……?」


 マリーが乗るゴーレムトルーパーだけが単騎突撃してくる事に驚いたミッシェルだったが、すぐに冷静になると他のゴーレムトルーパーを探した。するとドランノーガを初めとする残りのゴーレムトルーパー三体は、マリーのゴーレムトルーパーの遥か後方に見えた。


「速度が違うからあえてマリーだけを突撃させたのか? ならば次に来る手は……」


 ミッシェルはマリーが、機動力のある自分がこちらの陣形を崩してその隙をサイ達に攻撃させるつもりだと予測した。そしてそれは他のソル帝国のゴーレムトルーパー三体も同じようで、ミッシェルを含めたソル帝国側のゴーレムトルーパーはマリーのゴーレムトルーパーを囲むよう動き始めた。


「向こうが何かをする前にまずマリーを叩く! それから後に前進……を……?」


 ミッシェルがマリーを一斉に攻撃するよう、三体のゴーレムトルーパーに指示を出そうとした時、彼女のゴーレムトルーパーは急に横へと方向を変えた。


「マリー? 一体何処に……っ!?」


 いきなりマリーのゴーレムトルーパーが方向転換をした次の瞬間、ミッシェル達の前方で突然大爆発が起こった。




「残念。当たらなかったようですね」


 ドランノーガの操縦室でピオンがミッシェル達、ソル帝国側のゴーレムトルーパーを見ながら呟く。しかしその表情は言葉とは違い、あまり残念そうではなかった。


 先程の爆発はドランノーガの砲撃によるものなのだが、ピオンの言う通り砲撃はミッシェル達には当たらず、その手前の地面をえぐるだけで終わっていた。


「ろくに狙っていないのに当たるわけないだろ。むしろこれで『狙い通り』だ」


 ピオンの言葉に答えながらサイは更にドランノーガに指示を出し砲撃を行い、ピオンは自分の主人である青年の言葉に頷く。


「それもそうですね。それではこの調子で戦場の地面を耕しましょうか」


「ああ、今やっているよ」




「あれがドランノーガの砲撃か……。報告では聞いていたけど実際に見ると迫力が違うな」


 ジェラードは自分のゴーレムトルーパーの操縦室の中で、砲撃を行っているドランノーガを見ながら思わず口を開く。


「というか遠距離攻撃が可能なゴーレムトルーパーなんて反則だろ? そんなの使い方次第でいくらでも戦場を支配できるじゃないか」


 アイゼン王国がジェラードを合同部隊に参加させたのは、フランメ王国を初めとする三ヶ国との同盟を結ぶ以外に、ドランノーガの性能を間近で観察する理由もあった。そして彼は祖国の考えが正しかったと思う。


「さて、向こうも動き始めたし俺もそろそろ行かなきゃな」


 ジェラードは視界の端でザウレードが動き出したのを見て、自身もゴーレムトルーパーを動かした。


「さあ行くぜ! 『ヴォルダート』!」


『………!』


 ジェラードからの指示を受けて彼の乗るゴーレムトルーパー、ヴォルダートは地を駆けた。

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