最後の作戦会議

 模擬戦当日。模擬戦はソル帝国の国内にあるとある草原で行われることになった。


「こうして見ると壮観ですね」


 草原に立つヴィヴィアンが向こう側を見て呟く。彼女の視線の先にはソル帝国に所属している四体のゴーレムトルーパーの姿が見えた。


「こっちもゴーレムトルーパーは四体いるのですけどね」


 ヴィヴィアンの声を聞いたローゼが、自分達の背後にあるドランノーガを初めとする四体のゴーレムトルーパーを振り返って見ながら言うと、ヴィヴィアンもそれに頷いて同意する。


「そうなんだけど、やっぱり外見が似ているモノが揃っている姿というのは何か感動を覚えますよね」


 ヴィヴィアンの言う通り、ソル帝国側のゴーレムトルーパーは四体共、細かいところは違うが馬の下半身の背に騎士の上半身が生えている外見をしていて、姿が似通った巨大な存在があのように並んでいる姿は見るものにある種の威圧感を感じさせた。


「ヴィヴィアン、ローゼ。無駄な話はそこまでしましょう。皆待っていますよ」


「ええ、そうですね」


「はい」


 ヒルデに声をかけられたヴィヴィアンとローゼは、彼女と共にゴーレムトルーパーの足元に向かう。ゴーレムトルーパーの足元にはサイとピオンの他に、ブリジッタとジェラードにマリー、今回の模擬戦に参加するゴーレムトルーパーの操縦士達が集まっていた。


「よし。それじゃあ最後の作戦会議といこうか」


 ヴィヴィアンとローゼとヒルデがやって来たのを見てサイが言うと、まずピオンが今回の模擬戦のルールを確認する。


「模擬戦のルールは先に相手を全て戦闘不能にする。あるいは制限時間終了後に全体のダメージが少ない方が勝利でしたね」


「ああ、でもそれだと向こう側が有利だな」


 ジェラードがピオンの言葉に頷いて口を開く。


「向こう側のゴーレムトルーパーは四体共、走ることに特化しているからな。最悪、制限時間逃げ切られて判定勝ちをされることだってあり得る」


 ゴーレムトルーパーはその巨体で風のように大地を疾走し、戦場を蹂躙する兵器だ。


 そしてジェラードが言った通り、ソル帝国側の機体は、ゴーレムトルーパーの中でも特に速くそして長時間疾走することに優れていた。一体でも強大な力を発揮するゴーレムトルーパーを七機いて、しかもその全てが疾走距離と速度に優れている事が、ソル帝国を世界有数の軍事力を持つ理由であった。


「確かにジェラードに言うことには一理あるわ。でも彼らはそのような事はせず、正面から私達を倒そうとするはずよ」


 相手側と同じソル帝国のゴーレムトルーパーの操縦士であるマリーがジェラードの言葉を否定して周囲を見回す。


「この何もない草原は私と、彼らのゴーレムトルーパーには特に有利に働くわ。高速で連携をしながら突撃をされたら、まだろくに連携をしていない私達では対応が追い付かない。……それは分かっているわね?」


 マリーの言葉を全員正しく理解して頷く。そして今のこの状況はこの二日間の作戦会議でさんざん話し合って予想していたことだった。


「では、やはり例の作戦でいくのですか?」


「ああ、それが一番良いだろうな」


 ブリジッタの言葉にサイ達は頷き、事前に考えていた作戦の細かい打ち合わせを進めていくのであった。

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