同盟と合同部隊

「急に呼び出してすまなかったな」


 クリスナーガの異能で宮殿にやって来たサイ達が、宮殿の一室で待機しているとそこへバルベルトがやって来た。


「いえ、それは大丈夫なんですけど……彼女はどうしたんですか?」


「………」


 サイはバルベルトに返事をしてから部屋の窓の方を見る。そこには無言で外を見ているブリジッタの姿があった。


 ブリジッタはサイ達より先にこの部屋にいて、その時からずっと窓から外の様子を見ていた。どんなに話しかけても反応を見せず、頬を赤くして呼吸も僅かに荒くしてただひたすらに外を見ている彼女の様子に、サイ達はどうしたらいいか分からなかった。


「あー……、気にするな。滅多に見る機会がない他国のゴーレムトルーパーを見れて喜んでいるだけだ」


 バルベルトはこうしている今も窓から外を見ている娘の後ろ姿に一度だけ視線を向けると疲れたように言い、それを聞いてサイ達は納得した。ブリジッタがゴーレムトルーパーに強い憧れを抱いているのはここにいる全員が知っていることであり、恐らくあの窓からは大通りを歩いている三体のゴーレムトルーパーの姿がよく見えるのだろう。


「とにかくお前達を呼んだ理由は分かっているな? もうすぐフランメのだけでなくソル帝国とアイゼン王国のゴーレムトルーパーの操縦士がこの城にやって来る。例の件の会議はまだ先だが、その前に顔合わせをしておけ」


「分かりました。それにしてもいよいよなんですね……。正直まだ実感がわきませんよ。『四ヶ国の同盟とその合同部隊の設立』だなんて」


 バルベルトに頷いてからサイが言った言葉は、事情の知らない人間が聞けば……いや、事情を知っている人間でもとても信じられない内容であった。


 フランメ王国。アックア公国。アイゼン王国。ソル帝国。


 この四つの国が同盟を結び、それぞれの国から一体ずつゴーレムトルーパーとその操縦士を出し、それらを中心とした四ヶ国の主にモンスターを初めとした武力が必要な問題を解決する遊撃隊を設立する。


 発案者は今サイの目の前にいるバルベルトであり、その為詳しい条約を取り決める会議をアックア公国で行うことになったのである。元々はイーノ村でドランノーガとドラトーラの性能を目の当たりにしたバルベルトが、フランメ王国とアックア公国の関係を深めると同時に両国の問題を解決するために考えたもので、最初はフランメ王国とアックア公国の二国だけだったのに、何故途中からアイゼン王国とソル帝国も参加するようになったのかサイには分からなかった。


 それからバルベルトが退室した後、サイ達はしばらく部屋で待機していると部屋の扉が開き、二人の男女が部屋に入ってきた。

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