二国の操縦士

 部屋に入ってきた二人の男女はサイと同じくらいの年齢に見えて、それぞれフランメ王国のともアックア公国のとも違う軍服を身に纏っていた。


 二人の男女は部屋を見回した後、まず男の方がサイに話しかけてきた。


「お前がサイ・リューランだな? 俺はジェラード・バウト。アイゼン王国から来たゴーレムトルーパーの操縦士だ」


「私はマリー・デオニール。ソル帝国から来たゴーレムトルーパーの操縦士です」


 アイゼン王国のゴーレムトルーパーの操縦士である男、ジェラードが名乗るとそれに続いてソル帝国のゴーレムトルーパーの操縦士である女性、マリーも名乗る。つまりこの二人がフランベルク三世と共に先程まで大通りでゴーレムトルーパーを歩かせていた操縦士ということになる。


「貴方達がアイゼン王国とフランメ王国の操縦士ですか。俺は……」


「知っている。別に名乗る必要はない」


 ジェラードとマリーに挨拶をしようとするサイだったが、それはジェラードによって止められた。


「それにしても……」


 ジェラードはサイと、サイの周りにいるピオンを初めとする女性達を見てから不機嫌そうに眼を細める。


「聞いていたとおり、いつも女性を侍らせているのだな? 知っているか、リューラン小佐? お前は結構有名だぞ。いつでもどこでも美人の女性達を連れ歩いている種馬男だと」


「あら? もうマスターと私達の噂がアイゼン王国まで広まっているのですね」


 ジェラードの言葉に最初に反応したのはサイではなく彼の隣にいたピオンだった。彼女は椅子に座っていたサイの右腕に自分の腕を絡めて寄りかかると、アイゼン王国から来たゴーレムトルーパーの操縦士に向けて笑顔を浮かべた。


 そしてピオンが動くと同じくサイに従う他の三人のホムンクルスの女性達も行動を見せた。


「私達が常にマスター殿と行動をするのは当然のことです」


 ヴィヴィアンが真面目に頷きながらサイの左腕にピオンと同じように自分の腕を絡めて寄りかかる。


「私達は愛しのマスターのホムンクルス。愛しのマスターの望むままに行動するまでです」


 ヒルデが柔らかい笑みを浮かべてサイの後ろから彼の右肩に手を置く。


「それに種馬男というのもいいですわね。私達をいつも大切にして愛してくれているマスター様にはピッタリな愛称かと」


 ローゼが楽しそうに笑いながらヒルデと同じようにサイの後ろから彼の左肩に手を置く。


『『……!?』』


 ジェラードはサイに対して嫌味を言ったつもりなのだが、それをピオン達四人のホムンクルスの女性に笑顔で肯定されて、これにはジェラードだけでなく隣にいるマリーも驚いた顔となる。ちなみにサイ、クリスナーガ、ブリジッタの三人はピオン達の態度にもう慣れているので苦笑を浮かべるだけだった。


 そしてピオン達の返答に絶句していたジェラードは、やがて身体を震わせながら口を開いた。


「そんな……そんな……。巨乳で美人で……、それでやっぱり巨乳の四人が笑顔で従っていても……悔しくなんかないからなぁ……!」


 絞り出すような声でよく分からない負け惜しみを言うジェラードの目には涙が浮かんでいた。

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