ジェラードの叫び
「え……? ジェラード、さん? 貴方、何を泣いているのですか?」
「泣いてなんかないやい! ただ羨ましいだけだ!」
突然のジェラードの様子にマリーがやや引いた顔で言うと本人は大声を出して否定する。しかしジェラードの両目にはどう見ても大量の涙が流れており、その声は震えていた。
「う、羨ましい?」
「ああ、そうだ! このジェラード・バウト、ゴーレムトルーパーの操縦士の家系に生まれ、ゴーレムトルーパーの操縦士に相応しい人物になるよう物心のついた頃から厳しい訓練を受けてきた!」
マリーが思わず口にしてしまった呟きを切っ掛けに、ジェラードは己の内に溜まりに溜まった思いを吐き出す。
「訓練を受けていた頃は当然巨乳の女性との出会いなんてなかった! 軍人となってゴーレムトルーパーを受け継いだら巨乳の女性にモテるかなと思ったけどそんなことはなかった! 今まで部下になったのは全員汗臭い筋肉ムキムキの男の兵士ばかりだった! それなのに、それなのに……!」
そこでジェラードは一度言葉を止めると、サイに血の涙を流さんばかりの表情を向ける。
「サイ・リューラン……! お前は士官学校を卒業してすぐに偶然ゴーレムオーブを見つけてゴーレムトルーパーの操縦士になったそうだな? しかもその時に美人で巨乳なホムンクルスの女性を四人見つけて従者にした? そしてそこにいる美人で巨乳な文字通りのお姫様二人が婚約者だ?」
ジェラードはサイからピオンを初めとする四人のホムンクルス女性達、クリスナーガとブリジッタへと視線を向け、再び視線をサイに戻すと怒りを爆発させた。
「ふざけるなよっ!? 俺が、俺がゴーレムトルーパーの操縦士になるまでどれだけ苦労したと思っているんだ!? それなのに俺には巨乳の彼女なんて一人もいないんだぞ! 出会いすら一度もないんだぞ! だというのにお前は六人の美人な上に巨乳の従者や婚約者に囲まれて……! 謝れ! 俺に……いいや、彼女のいない男達に謝れ! 俺達を可哀想だと思うなら謝れよ!」
「……………その、すみませんでした」
サイはまるで世の男達の気持ちを代弁しているかのようなジェラードの叫びに気圧されると同時に、言葉の途中で何度も「巨乳」という単語が出た事から彼の巨乳の女性に対する情熱(というか性欲?)を理解できて素直に謝るのだった。
「なんというかその……面白い人ですね?」
「というかどれだけ巨乳が好きなのよ? あそこまで欲望を表に出している人、サイとビークポッドくらいしか知らないわよ、私?」
「……♪」
ジェラードの叫びに、それを聞いていたブリジッタとクリスナーガが小声で話し合い、ピオンは面白いオモチャを見つけたような顔となって他の三人のホムンクルスの女性達に「通心」の力で自分の意思を伝えるのであった。
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