作戦開始
「いよいよだな」
予定地に到着して大砲等の準備を整えてから一日が経ち、ドランノーガの操縦室で作戦の開始を待つサイが呟くと、その隣の席に座るピオンが頷いた。
「そうですね。後は砲兵隊が砲撃でモンスターの群れを呼び寄せるのを待つだけです。……それにしてもマスター、先程はクリスナーガさんとブリジッタさんのお二人と随分仲がよろしかったようですね?」
笑みを浮かべながら横目でどこか責めるような視線をサイに向けるピオン。
ドランノーガの整備の補助、そしてその操縦士であるサイ達の警護という建前で今回の任務に同行してきたクリスナーガとブリジッタは、現在補給部隊と共に後方に下がっている。そして二人は後方に下がる時、サイへ激励の言葉を送ると共に彼の頬にキスをしていて、ピオンは目撃していたのだった。
「いや、まあ……。一応二人とも婚約者だからな」
ピオンがクリスナーガとブリジッタにキスをされた事を言っているのだと察したサイは、まるで浮気がばれたような居心地の悪そうな笑みを浮かべて返事をする。赤紫色の髪をしたホムンクルスの女性は、そんな自分の主人である青年をしばらく見た後でため息を吐いた。
「はぁ……。まあいいです。確かにあのお二人はマスターの奥さんになられる方ですからね。でもマスター? マスターの初めてが私であることを忘れないでくださいね? しばらくはクリスナーガさんとブリジッタさんに譲ってあげますけど、すぐにまたドロッドロのトロトロに愛してマスターを私の虜にしてあがますからね」
ピオンが妖艶な笑みを浮かべてサイにそう言うと、操縦室の壁に三つの小画面が現れて、その中にいるヴィヴィアンとヒルデにローゼも同様の笑みを浮かべて頷いた。そんな四人の美女の笑顔から圧力を感じたサイが表情をひきつらせる。
「ドロッドロのトロトロって何だよ?」
「あら? 私達と肌を重ねた時の事をもう忘れましたか? 私達の胸の感触も?」
「忘れるわけがないだろ……っ!?」
ピオンの言葉にサイ……ではなく巨乳好きな馬鹿が即答したのと同時に、遠くから大砲の砲撃が聞こえてきた。サイ達が操縦室の壁に映る外の景色に視線を移すと、砲撃隊が次々と大砲を放ち、遠く離れた場所でいくつもの土煙が起こっていた。
「どうやら始まったようだな」
『はい。砲撃隊の砲撃によりモンスターの群れの全てが引き付けられています。ビアンカ元帥のヴァイヴァーンも予定地点に向かって移動を開始しました』
砲撃を開始した砲兵隊を見ながらサイが言うと小画面の中のヴィヴィアンが返事をする。
砲兵隊の砲撃に引き付けられたモンスターの群れをヴァイヴァーンと共に挟み撃ちにするのが自分達の役目で、行動が遅れれば砲兵隊とその後ろの補給部隊にも被害が及ぶかもしれない。サイもヴァイヴァーンに遅れないようにドランノーガを動かそうとした時、突然小画面の中のヴィヴィアンが大きな声を出した。
『……っ!? 待ってください! 今、海の方からモンスターの群れとは別の大きな生命反応が現れました!』
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