三つの巨大な影
サイが屋敷の手続きの書類を書いたり、ピオン達と雑談したら日から三日後。彼は自分の物となったアックア公国での屋敷の寝室で目を覚ました。
「………ん? もう朝……じゃなくて昼かよ」
目を覚ましたサイが部屋に備え付けられた時計を見ると、すでに朝の時間帯は過ぎていてもうすぐ昼になろうとしていた。
「流石に寝すぎたな」
そう呟いてサイは、普段ならもっと早く起きているのに今日に限ってこの時間帯まで寝ていた原因……自分と同じベッドで寝ている四人に視線を向ける。
「すぅ……マスター……」
「マスター……殿ぉ……」
「私の……愛しの……」
「うふふ……♪ マスター様ぁ」
サイと一緒のベッドで寝ているピオンを初めとする四人のホムンクルス達は、全員が一糸纏わぬ裸で、ついでに言えばサイも裸であった。
昨晩、ブリジッタはクリスナーガを実家へ招待してそこに泊まっていて、この屋敷にはサイとピオン達しかいなかった。そのせいか最近中々肌を重ねる機会がなかったピオン達は久々にサイと肌を重ね、久しぶりの情事に興奮した彼女達は激しく彼を求め、その結果として今の時間帯まで寝ることになったのである。
「ピオン達もピオン達だけど俺も俺だよな……」
ピオン達のことはクリスナーガもブリジッタも理解してくれているが、二人も婚約者がいる身で四人のホムンクルスの女性達と派手に肌を重ねている自分に、サイは内心で苦笑する。
そしてサイはピオン達を起こさないようにベッドから抜け出て着替えるのだが、そこで外が何やら騒がしいことに気づく。窓から外を見てみると、通行人が興奮したように話して大通りの方へと向かって行くのが見えた。
「一体どうしたんだ?」
アックア公国の首都で暮らしている住人達は、今日見た光景を決して忘れることはないだろう。全員が驚いた顔をしている住民達の視線の先では、首都の大通りを複数の巨大な影がゆっくりとそして堂々と進んでいた。
巨大な影の正体はゴーレムトルーパー。この惑星イクスで最強の兵器でその数は三体。
先頭を進むのは、全身が光を反射する銀色で一角獣の背に騎士の上半身が生えた姿のゴーレムトルーパー。
その後ろを進むのは漆黒の狼の背に戦士の上半身が生えた姿のゴーレムトルーパー。
そして最後を行くのは真紅の竜の背に騎士の上半身が生えた姿のゴーレムトルーパー。
最後を行くゴーレムトルーパーはフランベルク三世が乗るリードブルムであり、その前を進む二体のゴーレムトルーパーはアイゼン王国とソル帝国からやって来たゴーレムトルーパーであった。
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