竜と恐竜の違い

「ああ、なるほど。大通りが騒がしいと思っていたらこういうことだったのか」


 住宅の屋根の上で大通りを歩く三体のゴーレムトルーパーを見てサイは納得した顔で頷いた。


 国の戦力の要であるゴーレムトルーパーは、何か特別な任務がない限り基本的に自国の外に出ることはない。それなのにいきなり他国のゴーレムトルーパーが三体も大通りに現れたら、首都の住民達が驚くのも仕方がないだろう。


「それでマスター? あの二体のゴーレムトルーパーは一体何処の国のなんですか?」


 屋根の上にはサイの他にピオンを初めとする四人のホムンクルスの女性達もいて、ピオンがリードブルムの前を歩く二体のゴーレムトルーパーを指差してサイに質問をする。


「ああ。先頭はソル帝国、その後ろのはアイゼン王国のゴーレムトルーパーだ。

 ちなみにソル帝国が保有しているゴーレムトルーパーは全て下半身が馬で、国の紋章は馬に乗って槍を天に伸ばした騎士。アイゼン王国のゴーレムトルーパーは狼か犬の下半身ばかりで国の紋章は剣を加えた狼。

 どういう訳か同じ国のゴーレムトルーパーは外見の特徴が同じなんだ。だから国の紋章も自国のゴーレムトルーパーの特徴を表しているんだ」


 サイはピオンの質問に答えるついでに自分が知っている知識を言うと次はヴィヴィアンが話しかけてきた。


「そうなのですか?」


「そうだよ。ほら、フランメ王国の紋章は竜で、ドランノーガやリードブルムを初めとするゴーレムトルーパーの下半身も竜だろう?」


『『…………』』


 自国の紋章と、自分の愛機を初めとしたフランメ王国のゴーレムトルーパーの姿を思い出しながら言うサイだったが、ピオン達四人は彼の言葉に頷かず微妙な表情で首を傾げていた。


「? どうした?」


「いえ……。確かにリードブルムは国の紋章と同じ竜ですよ?」


「他のゴーレムトルーパーも竜と言えば竜なんですけど……」


「あれはどちらかと言えば……」


「『恐竜』ですよね」


 ピオン、ヴィヴィアン、ヒルデ、ローゼの順番で言葉を選びながら言うと、今度はサイが首を傾げた。


「恐竜? 何だそれは? 竜とは違うのか?」


「え? え~と、それはその……」


「やっと見つけた。こんな処で何をしているの?」


 前文明の知識で太古の生物である恐竜の存在は知っていたが、幻想の生物である竜との違いをどうサイに説明したらいいか分からずピオンが困っていると、彼女達の後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。ピオン達とサイが後ろを振り返るとそこには、クリスナーガがいつの間にか立っていた。

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