三国の関係

「クリスナーガ、どうしたんだ?」


「貴方達を探していたのよ。緊急の要件があるのに屋敷には誰もいなかったからね」


「要件ってアレのことですか?」


 サイの言葉にクリスナーガが両手を腰に当てて呆れたよな表情をして答えると、二人の会話を聞いていたピオンが大通りを歩いている三体のゴーレムトルーパーを指差して聞く。


「ええ、そうよ。リードブルムとあの二体のゴーレムトルーパーは、皆も知っている『例の件』の為にここまでやって来たの。……ふぅん。やっぱりソル帝国が先頭なんだ」


 ピオンの言葉に頷いたクリスナーガは、一角獣のゴーレムトルーパーがリードブルムとアイゼン王国のゴーレムトルーパーの前を歩いているのを見て呟き、それを聞いたサイが口を開く。


「まあ、見栄っ張りのソル帝国としてはフランメ王国とアイゼン王国の後ろを歩くのは許せないんだろ? むしろよくゴーレムトルーパーだけとはいえ、このアックア公国に寄越したと思うよ。ソル帝国だったら何か要件があるなら自分達の元へこいと言いかねない」


「実際言ったそうよ。今回の件の会議はソル帝国で行うべきだって。ソル帝国としてはどんな要件でも主導権を取りたいのでしょうね。……特に私達フランメ王国とアイゼン王国に対しては」


 サイの呟きにクリスナーガが呆れたように言い、今度はヴィヴィアンが自分の主人とその婚約者に話しかける。


「それってやっぱり、フランメ王国とアイゼン王国が元々はソル帝国の一部だったからですか?」


「……そういえばヴィヴィアンはフランメ王国とソル帝国の歴史を勉強していたのよね。ええ、そうよ」


 クリスナーガは以前ヴィヴィアンが、フランメ王国とアックア公国の関係が強固になる切っ掛けとなったイーノ村の前文明の遺跡を献上する際、フランメ王国とソル帝国の関係について指摘していたのを思い出し頷く。


 あの時ヴィヴィアンが言っていたように、二百年前に独立するまでフランメ王国はソル帝国の一部であり、それはアイゼン王国も同じであった。その為ソル帝国では今もフランメ王国とアイゼン王国の両国を取り込もうとする動きがあり、ソル帝国の貴族や軍の上層部を二国を自分達の属国のように見ているらしい。


「今までソル帝国はフランメ王国とアイゼン王国を手に入れようと色々な手段を取ってきたわ。特に距離が近いフランメ王国は念入りにね。今回の件に参加したのだって、それに関係しているんじゃないかって、貴族や軍の人達は警戒しているわ」


「やっぱり皆そう思うよな……」


 サイはクリスナーガの言葉に微妙な表情となる。今回ソル帝国を呼んだのはアックア公国側、バルベルトの提案なのだが、これにはフランメ王国とアイゼン王国の両国から少なくない否定の声が上がった。両国とも先程クリスナーガが言ったことを警戒しているからであった。


「……まあ、これ以上は私達がどうこう言えることじゃないか」


 そこまで言ったところでクリスナーガはため息をついて話を締め括ると、サイ達に向けて自分の右手を差し出した。


「さっ、無駄話はおしまい。皆、私につかまって。私の『異能』で皆を送るわ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る