空中戦の名手
「迎撃す……!?」
「マスター! 高度が下がっていきます!」
サイが上空から急降下して来る蛇のモンスターを迎撃しようとした時、操縦席が大きく揺れてドランノーガの高度が下がりだした。
ドランノーガは脚部と尻尾にある噴出口から高出力の炎を吹き出す事で高度と推力を得て滑空する事が出来るのだが、空を飛べるのは一定の時間だけでそれ以上は高度が維持出来なくなり一度地面に降りる必要がある。サイは蛇のモンスターへの攻撃を諦めると、ドランノーガを着地させた。
『サイ? どうしたの?』
「すみません。一度ドランノーガを地面に降ろす必要があったので着陸しました」
操縦席の壁に映し出された小画面から聞こえて来るアースレイからの通信にサイが答えると、小画面の中の准将は一つ頷いてからサイに指示を出す。
『オーケー、分かった。とりあえずさっきの火の玉を飛ばしてモンスターの牽制をして』
「了解しました。『カロル・ディギトゥス』!」
『………!』
アースレイの指示に従いサイが武装名を口にすると、ドランノーガの上半身の騎士の両腕から無数の火の玉が発射され、火の玉の群れが蛇のモンスターに命中する。
「ーーーーー!」
ドランノーガが放った無数の火の玉は蛇のモンスターに命中してモンスターの鱗を焦がし、血肉を吹き飛ばすのだが、それでもモンスターはひるむ事なく地上にいるドランノーガとハンマウルスに襲いかかろうとする。しかし無数の火の玉をその身で受けたせいか急降下して来る速度が若干遅くなっており、蛇のモンスターが地上から数十メートル上空まで来たところでアースレイが行動に移る。
『よし、あの高さなら……ハンマウルス!』
『………!』
アースレイが指示を出すとハンマウルスはその巨大な嘴を開けて大きく息を吸う。するとハンマウルスの巨大な鳥類のような両脚が大きく膨れ上がった。
「えっ!?」
「あれは……!」
いきなりハンマウルスの脚部が膨れ上がったのを見てサイとピオンが驚きの声を上げるが、アースレイはそれに構わずハンマウルスに次の指示を出す。
『行くよ、ハンマウルス!』
『………!』
アースレイの指示を受けたハンマウルスはその場で跳躍。それと同時に両脚の足裏から圧縮されて空気を噴き出して推力を得て、一瞬で空にいる蛇のモンスターの更に上空へと跳び上がった。
『………!』
蛇のモンスターの上空でハンマウルスが再び嘴を開けて大きく息を吸うと、今度は脚部ではなく尻尾の先端にある鉄球が膨れ上がった。
『今までよくもやってくれたな!? お返しだ!』
『………!』
アースレイの怒りの声に呼応するかのようにハンマウルスは縦に回転をすると、最初の五倍くらいの大きさまで膨れ上がった鉄球を蛇のモンスターの胴体の真ん中辺りに勢い良く叩き込んだ。
「ーーーーーーーーーー!?」
初めてハンマウルスからの攻撃を胴体に受けた蛇のモンスターは、痛みによる悲鳴を上げながら地上に堕ちて地面に激突する。その様子を見てアースレイはハンマウルスの操縦席の中で胸を張った。
『どんなもんだい。これでも僕とハンマウルスはフランメ王国一の空中戦の名手って呼ばれているんだからね。……まあ、その称号もサイとドランノーガに譲られるだろうけどね』
そう言うアースレイが乗るハンマウルスは、大きく息を吸って膨らませた翼を羽ばたかせて地上に着陸しており、それを見ていたサイが呟く。
「あれがアースレイさんとハンマウルスの戦い方か……」
「何と言うか、メチャクチャな機体ですね」
『だけど武装の表面積を変化させたり、あの大きな跳躍力は凄いと思うけど?』
『そうですね。あの蛇のモンスターは自由に空を飛べたから苦戦していたみたいですけど、現代のゴーレムトルーパー戦ではあの跳躍力は充分脅威となるはずです』
『それに中々ユニークな動きで見ていて面白かったですかね♪』
サイの呟きにピオン、ヴィヴィアン、ヒルデ、ローゼが続く。
確かに今見せた戦いぶりは風船を使ったオモチャのようであったが、一瞬で空を飛ぶ蛇のモンスターの上空へ跳び上がってその巨体を一撃で地面に叩き落とした実力は間違いなく、ハンマウルスが今までフランメ王国を守護してきたゴーレムトルーパーの一体である事は疑いようのない事実であった。
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