生まれ変わったザウレード

 ザウレードの下半身の竜の頭部にある操縦室は元々一人乗りであった。だが今では操縦席が縦に二つ並んでいる二人乗りに改造されていて、前の操縦席にはカーラが、後ろの操縦席にはブリジッタが座っていた。


 ザウレードが一人乗りから二人乗りに改造されてブリジッタだけでなくカーラも乗るようになったきっかけは、ブリジッタがザウレードの操縦士に任命された日に、彼女がサイに相談をしたことであった。


 ゴーレムトルーパーの操縦士は最初にゴーレムトルーパーに乗った時に、操縦方法を含めた機体の情報を全て脳に焼き付けられる。その為、動かすだけなら操縦士となったブリジッタでも出来るのだが、ゴーレムトルーパーに乗って戦うとなれば話が違ってくるので、彼女は自分の婚約者てあるサイに戦闘のアドバイスを聞きに来たのだ。


 するとブリジッタの相談をサイと一緒に聞いていたピオンが、ザウレードを二人乗りに改造してカーラも乗せることを提案したのである。


 幸い操縦席となりそうな部品はカーラと同じ遺跡で発見されていた。それをザウレードに吸収させて自己進化機能を発動させることでザウレードを二人乗りに改造して、ブリジッタにカーラの操縦士登録の許可を出させて彼女も操縦士としたのだ。


 本人の言うところによればカーラは自分の主人、この場合はブリジッタと要人を護るための戦闘用ホムンクルスでゴーレムトルーパーに関する技能を持っていないのだが、それでもピオンはブリジッタ一人だけを乗せるより戦力になると考えた。そのピオンの考えが正しかったことがこの模擬戦で証明されたのであった。


「ブリジッタ様、敵が、迫っています。牽制を、お願いします」


「は、はい」


 横からミッシェルのとは別のゴーレムトルーパーが迫ってきているのに気づいたカーラがブリジッタに指示を出し、それを聞いたブリジッタが慌ててザウレードを操作する。


 ザウレードの操縦はカーラが下半身の竜を、ブリジッタが上半身の戦士を担当していて、ブリジッタに操作されたザウレードの上半身の戦士が手に持っていた斧槍ハルバードを振るう。ブリジッタが振るう斧槍ハルバードの動きはぎこちなく、ソル帝国のゴーレムトルーパーに掠りもしなかったのだが、それでも動きを僅かでも遅らせる牽制の役割は果たし、カーラにはその僅かな隙さえあれば充分であった。


「ザウレード!」


『………!』


 カーラの声と同時にザウレードの下半身の竜が前肢にあるブレードを前に付き出してソル帝国のゴーレムトルーパーに突撃をする。そしてザウレードのブレードはソル帝国のゴーレムトルーパーの装甲に浅くない傷を刻み付け、ザウレードは再び後ろへと大きく跳躍して二体のゴーレムトルーパーと距離をとった。


『『………!?』』


 相手が何の戦闘訓練を受けていない公女だと油断していたミッシェル達は、ザウレードの鋭い反撃に驚きを隠せずにいた。

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