ザウレードの反撃

「さあ、もう一回行くぜ……ん?」


 ジェラードが再び攻撃を仕掛けようとしたその時、彼が攻撃を仕掛けたゴーレムトルーパー、ミッシェルの機体ともう一体のゴーレムトルーパーが別の場所に移動し、代わりに別の二体のゴーレムトルーパーがヴォルダートの前に進み出た。


「あいつら、何処へ……って、あれは……」


 ジェラードがミッシェルの機体ともう一体のゴーレムトルーパーが向かった先を見てみると、そこには彼と共にここまで来ていたザウレードの姿があった。


「そういうことかよ。まぁ、お手並み拝見とさせてもらうぜ、『お二人』とも」


 ミッシェルのともう一体のゴーレムトルーパーがザウレードに向かって行くのを見たジェラードは、そう呟くと自分の前に立つ二体のゴーレムトルーパーに意識を集中させた。




「私達はまずザウレードを倒す。その後で仲間と合流して他の敵を各個撃破するぞ」


 隣を走る仲間のゴーレムトルーパーに指示を出すミッシェルは、内心では複雑な気分となっていた。


 確かにザウレードは自分の後輩や多くの自国の兵士達を殺めた憎い機体だが、今あれに乗っているのは当時の出来事とは関係のない別人だ。ミッシェルはザウレードを攻撃する時、攻撃に憎しみがこもることを自覚しており、その憎しみを関係のない操縦士、ブリジッタに向けるのは間違っていると思っている。


 加えて言えばブリジッタはザウレードの操縦士に選ばれるまで、ゴーレムトルーパーの訓練どころか兵士としての訓練すらも受けていない正真正銘の戦いの素人であるという報告を受けており、それがミッシェルに更なる迷いを与えているのだった。


(ええい! 迷うな! 相手が素人ならば一撃で倒してしまえばいいだけのことだ!)


 自分で自分を叱咤したミッシェルは、走りにくい地面を走るゴーレムトルーパーの速度を無理矢理速めザウレードまでの距離を詰めると、上半身の騎士が持つ槍をザウレードに向けて突き出した。速度の乗ったミッシェルの槍の勢いは鋭く、彼と同じゴーレムトルーパーに乗っているとは言え、戦闘の素人であるブリジッタでは躱せるはずがなかった。しかし……。


「何だと!? ぬうっ!」


 ブリジッタの乗るザウレードは、ミッシェルの槍を避けるとそれだけでなく、下半身の竜の前肢にあるブレードで反撃をしてから後ろへと跳躍した。


「今の動き……!? 戦いの素人ではないのか?」




 ミッシェルがザウレードの反撃に驚愕していた時、ザウレードの操縦室ではブリジッタが驚きで心臓の鼓動が早くなった胸を押さえていた。


「こ、これがゴーレムトルーパー同士の戦いなのですね……」


 ブリジッタは自分が参加している戦いの激しさを実感すると、ザウレードに今のミッシェルの攻撃を避けさせてくれた人物へ礼を言う。


「カーラ、ありがとう。お陰で助かりました」


「はい。ブリジッタ様」


 ブリジッタが礼を言った相手、先程ザウレードを動かしてミッシェルの攻撃を避けさせたのは、アックア公国の遺跡で発見されてブリジッタの従者なったホムンクルスの女性、カーラであった。

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