本題突入
「それじゃあ、そろそろ本当に本題に入るわよ?」
話が一段落ついた……というか、嫉妬に狂ったビークポッドとジェラードがサイに殴りかかりそうになったところでマリーは強引に話を本題、ミスト王国の対策に戻した。
「そうだな。ちなみにアイゼン王国はこれから来るミスト王国の軍人達をどうするつもりなんだ?」
今回決定権を持っているのは被害を受けているアイゼン王国である。だからサイはアイゼン王国出身のジェラードに意見を聞くと、彼はそれに一つ頷いてからアイゼン王国の軍から聞かされた方針をこの場にいる皆に伝えた。
「国はこれからクリスライドを助けに来るであろうミスト王国の軍人達も、今後の交渉の材料にするつもりだそうだ」
「今後の交渉?」
「ああ。今回のミスト王国の行動はモンスターを用いた明らかなアイゼン王国への敵対行動だからな。だからアイゼン王国、フランメ王国、アックア公国、ソル帝国の同盟を組んだ四カ国でミスト王国に抗議して、賠償金なり何らかの譲歩を求めるつもりなんだそうだ」
サイの質問に答えるジェラードであったが、その表情は僅かに不満そうであった。今回の騒動で実の父親を傷つけられ、実家が保有しているゴーレムトルーパーの一機が中破させられている彼としては、心のどこかでミスト王国と一戦を交えたい気持ちがあるのだろう。
「それは分かったが、何でこれから来るミスト王国の軍人達まで捕まえて交渉の材料にするのだ? すでに捕まえているグレドプテラの操縦士やその部下だけでも充分じゃないのか?」
「いや。グレドプテラは今まで全くの極秘の存在で、今まで俺達を含めたどの国の人間もあの機体の事は知らなかった。だからクリスライドやその部下だけでは、ゴーレムトルーパーを偶然手に入れた武装集団が自分達の名前を騙っているとミスト王国の言い張る恐れがあるらしい」
「ゴーレムトルーパーを偶然手に入れた武装集団って、黒竜盗賊団じゃないんですから……」
今度はビークポッドが質問をしてジェラードが首を横に振ってから自分が国から聞かされた話をすると、ピオンが呆れた顔になって呟いた。他の皆も彼女と同意見なのか頷いていた。
「まあ、俺もそう思うけど、とにかくミスト王国にシラを切らせない為に、できるだけ身元が分かりそうな人間を多く捕まえておいた方がいいってことらしい」
「なるほどな。そうなるとまたお前達の力を借りることになるな。ヒルデ、ローゼ」
ジェラードの話にとりあえず納得したサイは自分の従者であるホムンクルスの女性、ヒルデとローゼを見る。二人の異能を使えば自分達やクリスライドに近付いてくるミスト王国の軍人達の行動も分かるし、国同士の交渉で使える新しい情報が得られるかもしれない。
そういった期待を込めたサイの視線を、ヒルデとローゼの二人は笑みを浮かべて受け止めて同時に頷いてみせた。
「お任せください、愛しのマスター。ミスト王国からのお客様がやって来たらすぐに見つけ出してみせます」
「そのミスト王国の方々がこれ以上面白い話を持ってくるとは思えませんが、刺激的な展開になることを期待しましょう」
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