三人の名前
「ふむ。よく分かりませんが、マスター殿が喜んでくれてよかったです」
「そうですね。愛しのマスターが哀しんでいないのはよいことです」
「ふふっ♪ マスター様はとても楽しそうな方ですね。これは先が楽しみです♪」
夜空に向かって叫んだサイという名の巨乳好きな馬鹿の姿に、三人のホムンクルスの女性がそれぞれの感想を口にするが、その表情と口調から見ても好印象を懐かれているのが分かる。……非常に不可解で羨ましいことに。
「マスター、喜ぶのはそれくらいに。皆もマスターに挨拶をしてください」
そんなサイと三人のホムンクルスの女性にピオンが声をかける。
ピオンはドランノーガの自己進化機能を使ってホムンクルス製造ユニットを作る時、自分がそこから肉体を製造される四人のホムンクルスのリーダーになるように設定していた。その為、肉体を製造され時にサイとピオンの情報を与えられた三人のホムンクルスの女性は、彼女の指示に従い挨拶を始めた。
「はい。まずは私から。『ヴィッケ・タイプ』のホムンクルスです。精一杯尽くしてマスター殿に喜んでもらいたいと思います」
最初に挨拶をしたのは右側の金髪の少女で、曇りのない瞳でサイを見て挨拶をする姿は、主人に尻尾を振る子犬のように見えた。
「では次に私が……。『ヒュアツィンテ・タイプ』のホムンクルスです。愛しのマスターを哀しませないよう努力させていただきます」
次に挨拶をしたのは真ん中の黒に近い紫の髪の女性で、どこか儚げな笑みを浮かべて挨拶をするその姿からは、サイが今まで感じた事がない大人の色香が感じられた。
「最後は私ですね? 私は『チュベローズ・タイプ』のホムンクルス。いつでもお側にいますので一緒に楽しい時を歩みましょうね、マスター様?」
最後に挨拶をしたのは左側の白い髪に褐色の肌をした女性で、蠱惑的な笑みを浮かべる彼女は他のホムンクルスの女性とはどこか毛色が違うような印象であった。
「……………ピオン」
そんな三人のホムンクルスの女性の挨拶を無言で聞いていたサイは、視線を目の前の三人に向けたまま自分の隣に立つホムンクルスの少女に声をかけた。
「はい。どうしましたか、マスター?」
「凄い事を発見したぞ! 女性の胸って大きさや形の違いによってその揺れ方も微妙に異なるんだ!」
まるで世界の真理を解き明かした学者のような顔で叫ぶサ……巨乳好きな馬鹿。三人のホムンクルスの女性がホムンクルス製造ユニットから出てきた時から彼、巨乳好きな馬鹿の視線は彼女達の胸に釘付けで、それは三人が挨拶をしている時も変わらなかったようだ。
「マスター……。三人の挨拶、ちゃんと聞いていました?」
「え? ああ、それはもちろん聞いていたって。……それにしてもピオンと初めて出会った時もそうだったけど、ホムンクルスって自分の名前を持っていないんだな」
流石にジト目になるピオンに返事をしてからサイは、前文明の遺跡で初めて彼女と出会った時の事を思い出す。初めて会った彼女は自分の名前を持っておらず、今の名前もサイが考えてつけたものであった。
その時の事を思い出したサイは、目の前にいる三人のホムンクルスの女性に提案する。
「なぁ? ヴィッケとヒュアツィンテとかだと俺が呼びづらいから三人に名前をつけていいか?」
サイの名前をつけるという提案に対して三人のホムンクルスの女性は……。
「本当ですか!? マスター殿から名前をいただけるなんて嬉しいです!」
金髪の少女は今にも跳ね上がらんばかりに喜び、
「私は構いません。どうぞ愛しのマスターのお好きなように」
黒に近い紫の髪の女性は微笑を浮かべて小さく頭を下げ、
「ふふっ。素敵なお名前をお願いしますわね、マスター様」
白い髪に褐色の肌をした女性は先程と同じ蠱惑的な笑みを向けてくる。
どうやら三人とも名付けらてもよさそうなので、サイはしばらくの間考えた後、三人の名前を決めた。
「……よし、決めた。金髪の君。君の名前はヴィヴィアンだ」
「はい。ヴィヴィアンですね。覚えました」
サイに名付けられた金髪の少女、ヴィヴィアンが元気よく返事をする。
「貴女の名前はヒルデで」
「分かりました」
黒に近い紫の髪の女性、ヒルデは小さく頭を頭を下げて了承の態度を示した。
「それで貴女の名前はローゼ」
「承知しました。名前という素敵なプレゼント、ありがとうございます」
白い髪に褐色の肌をした女性、ローゼは頷いて感謝の言葉を述べる。
「全員マスターから名前をつけてもらいましたね。これで貴女達も正式にマスターの『モノ』です。これからはマスターの為に、力を合わせて全力でマスターをサポートしていきましょうね」
「「「はい」」」
サイが名付け終わるの見てピオンがヴィヴィアン、ヒルデ、ローゼの三人に声をかけ、三人のホムンクルスの女性はそれに声を合わせて返事をした。
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