空中戦(4)
「な……!? 何、挑発しているんだよ、ピオン!?」
サイはこちらに突進をしてくるグレドプテラを見た後、緑のゴーレムトルーパーをここまで怒らせたピオンを横目で見るが、赤紫色の髪をしたホムンクルスの少女は焦るどころか余裕の笑みを浮かべていた。
『避ける! そこにいろよぉ!』
「ええ、避けませんとも。……マスターもいいですね?」
「はあっ!?」
グレドプテラから聞こえてくる怒声に笑いながら答えた後、自分にだけ聞こえる小声で話しかけてきたピオンに、サイは今度こそ彼女の方を見た。
さっきまでは攻撃を避けろと言っていたのに、今度は攻撃を避けるなとはどういうつもりだ? しかもご丁寧に相手を挑発して怒らせて。
サイがそう考えているとピオンが横目でこちらを見てきて一言呟いた。
「マスター、左の翼です」
こちらに突進をしてくるグレドプテラの動きは常人では見切れないほどに素早いものだが、ドランノーガのナノマシンによって身体能力を強化されているサイは緑のゴーレムトルーパーの姿を目で捉えることができた。そしてピオンに言われてグレドプテラの下半身の竜、その左翼を見てみると右翼にはないある「異変」に気づき、隣の操縦席に座る彼女の狙いを理解するのだった。
(そういうことなのか……? だけどそれだったら挑発する前に説明してくれよ)
勝手にグレドプテラを挑発したピオンに何か言ってやりたい気持ちはあるが、それよりも今はもう目の前まで迫ってきているグレドプテラの方が先だ。だからサイは心の中で愚痴を一つこぼすと、ドランノーガの操縦に専念した。
「ドランノーガ!」
『………!』
サイの指示を受けたドランノーガはグレドプテラの突進を避けず、その重装甲を活かして相手の攻撃を受け止め、更に攻撃が当たった瞬間に下半身の竜の両腕を使い緑のゴーレムトルーパーを拘束するのだった。
『っ!? は、離せ! お前も墜落するぞ!?』
ドランノーガとグレドプテラ。二体のゴーレムトルーパーが組み合った事により、高度を維持できなくなった二体を少しずつ地面に落ちていき、グレドプテラから若い男の焦った声が聞こえてくる。
しかしサイは拘束を解くことなく、グレドプテラの下半身の竜の左翼に狙いを定めてドランノーガの武装を使用した。
「カロル・ディギトゥス!」
『………!』
『なあっ!?』
ドランノーガの上半身の騎士の手から放たれた炎の弾丸は、グレドプテラの下半身の竜の左翼に命中する。そして次の瞬間、緑のゴーレムトルーパーの翼が爆発が起こり、グレドプテラからこれ以上ないくらい驚きを含んだ悲鳴のような声が聞こえてきた。
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