空中戦(3)
『うわー……。ゴーレムトルーパーの空中戦とか凄いものを見ているよな、俺達?』
『そうね。こんなの報告書に書いても信じてもらえるか怪しいわね……』
地上でジェラードとマリーはドランノーガとグレドプテラの空中戦を見上げながら会話をしていた。その二人の声音は「ゴーレムトルーパー=地上を駆ける兵器」という、これまでの常識を根底から覆す光景を見せつけられたせいか驚き疲れているように聞こえた。
『しかしどうするんだ? こんなのじゃサイとピオンの援護なんかできないぞ?』
『ええ、サイ達は自分達だけで勝てる勝算があったみたいだけど……』
『……あら?』
ジェラードとマリーが話していると、それまで会話に参加せず上空を高速で飛び回るドランノーガとグレドプテラを見ていたブリジッタが声を上げた。
『どうかしましたか、ブリジッタさん?』
『いえ、その……。気のせいかもしれませんけど、あの緑色のゴーレムトルーパー……グレドプテラでしたっけ? それの動きが少し変に見えましたから』
『変? ……一体どの辺りが?』
マリーの質問にブリジッタが答えると、それを聞いたジェラードがグレドプテラの動きを観察する。しかし彼には緑色のゴーレムトルーパーの動きに異変があるようには思えなかった。
『さっき左に旋回しようとした時に……』
ブリジッタがジェラードに自分が異変を感じた様子を説明しようとしたその時、空から聞き覚えがある声が聞こえてきた。それはドランノーガに搭乗しているピオンの声であった。
「グレドプテラの操縦士さーん。聞こえてますかー?」
「ピオン? お前、一体何を?」
ドランノーガの操縦室の中でサイは、戦闘中にいきなりグレドプテラに話しかけたピオンを見る。だが赤紫の髪をしたホムンクルスの少女は、自分の主人である青年の方を見ずに緑のゴーレムトルーパーに向けて言葉を続ける。
「さっきからこのドランノーガを潰すだの落とすだの散々大きなお口を聞いていたのに、やる気のない攻撃しかしないのはどういうことですかー? 戦う気がないのでしたら、さっさと帰ってくれません? 私達も暇じゃないんですよねー」
『何ぃ!?』
ピオンの言葉にグレドプテラから若い男の怒声が上がり、それを聞いたピオンは笑みを浮かべて更に言葉を緑のゴーレムトルーパーに向けて投げかける。
「大体ですねぇ? 貴方のそのグレ……ええと何て名前でしたっけ? グレートフライでしたっけ? そんなポンコツゴーレムトルーパーがドランノーガに勝てると思っている事がそもそも間違っているんですよね」
『コイツの名前はグレドプテラだ! グレドプテラがポンコツだとぉ!?』
「はい♩」
「………」
グレドプテラから聴こえてくる先程よりも激しい怒声に、ピオンはそれはもう楽しそうな表情で返事をして、隣で様子を見守っていたサイが若干引いた表情となる。
「さっきの二回の突進だって何で二回とも避けたと思います? あの程度の攻撃、避けるまでもなかったんですけど、そのポンコツゴーレムトルーパーがこの逞しいドランノーガにぶつかったら、それだけで砕けてしまいそうだからわざわざ避けてあげたのですよ? そんな私達の優しさも分かってもらえないなんて哀しいですねぇ?」
『……!? き、貴様ぁ!』
ピオンの挑発に今度こそ怒り狂ったグレドプテラは、ピオンとサイが乗るドランノーガに向かって三度目の突進をするべく急加速をした。
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