空中戦(2)

『避けるなぁ! グレドプテラ!』


『………!』


 若い男の怒声に応えてグレドプテラの戦士の上半身がその両手に光の玉を作り出し、それをドランノーガに向けて放つ。


「高エネルギー反応! マスター、避けてください!」


「ドランノーガ!」


『………!』


 光の玉の危険性を感知したピオンの警告を聞いたサイがドランノーガが指示を送り、操縦士の命令を受けた紺色のゴーレムトルーパーは空中で加速をしながら旋回することで、緑のゴーレムトルーパーが放った光の玉を回避する。その直後、ドランノーガが先程までいた空間に大きな爆発が起こった。


「やっぱりあの光の玉も爆発するのか……」


「威力は空爆時の光の玉より少し強いくらいですね。今のところ、あれ以外の上への攻撃手段は確認できません」


 今の爆発はグレドプテラの上半身の戦士が放った光の玉が破裂したものである。それを確認したサイとピオンが冷静に分析をしているとグレドプテラからまた若い男の怒声が聞こえてきた。


『……! 何なんだよ! 何なんだよ、お前は! 大人しく落とされろよ!』


「落とされろと言われて落とされる人なんているわけないじゃないですか? 向こうは随分と余裕がないようですね?」


「いや、余裕がないのはこっちも同じだぞ。このままだと高度が維持出来なくなる」


 グレドプテラから聞こえてくる癇癪を起こした子供のような若い男の言葉に、ピオンは呆れを通り越して馬鹿にしたような表情で言うが、そんな彼女にサイは僅かな焦りを感じさせる声で話しかける。


 ドランノーガは確かに空を飛ぶことが出来るが、それは脚部と尻尾の噴出口から炎を噴き出して高高度まで飛び上がった後に滑空をするというものだ。今は噴出口から噴き出る炎の勢いで無理矢理高度を保ってはいるが、このままではサイの言う通り、徐々に高度が下がってしまうだろう。


「どうするんだ、ピオン? 高度が下がったらお前が言う通り、あの空爆の餌食となるか突進をまともくらうぞ? 何か狙いがあって空に飛ぶように言ったんじゃないのか?」


「そうですね……」


 サイに聞かれてピオンはグレドプテラを見ながら口に指を当てて考え込む。


「最初は攻撃を避けながら『あそこ』にこちらの攻撃を当てるつもりでしたが……、ここは確実に当てるためにもう一工夫しましょうか?」


「あそこ? 一体どこのことを言っているんだ?」


 どうやらピオンはグレドプテラの機体のどこかに攻撃の狙いを定めているらしいのだが、サイが聞いても彼女はそれに答えず、攻撃の「一工夫」をするために外部音声でグレドプテラに向かって話しかける。

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