空中戦(1)
未知の、それもドランノーガよりも飛行能力が長けている相手に空中戦を挑むのは一抹の不安がある。
しかしこれまでピオンは何度も的確なアドバイスをしてサイを導いてくれた。なので今度も彼は彼女の言葉を信じてドランノーガを操作する。
「飛べ! ドランノーガ!」
『………!』
サイの指示に従ってドランノーガは脚部と尻尾にある噴出口から炎を噴出させ、緑のゴーレムトルーパーがいる上空へと飛び立った。
『ドランノーガも飛びやがった……!?』
『我が目を疑う光景よね……』
『頑張ってください。サイさん。ドランノーガ様』
ドランノーガの飛行能力については報告で聞いてはいたが、実際に空を飛ぶのを見るのは初めてのジェラードとマリーは驚きを含んだ声で呟き、その横でブリジッタは自分の婚約者と彼が乗るゴーレムトルーパーの名前を呼んで応援をするのだった。
『来たか、ドランノーガ!』
空へ飛び上がったドランノーガの姿を確認した緑のゴーレムトルーパーから若い男の声が聞こえてくる。その声からは隠しようのない強い怒りが感じられた。
『空は俺の! 俺とグレドプテラだけの領域なんだ! そこに勝手にやって来やがって!』
「グレドプテラ……? それがあのゴーレムトルーパーの名前なのか? ……でもやっぱりそんな名前のゴーレムトルーパーは聞いたことがないな」
「空を飛べるのが自慢のようですけど、だから空は自分だけのものって子供ですか?」
緑のゴーレムトルーパー、グレドプテラから聞こえてくる声にサイが首を傾げ、ピオンが呆れたような表情となる。
『うるさいっ! 空を飛べるゴーレムトルーパーはこのグレドプテラだけでいいんだ! だからお前達のドランノーガはここで潰す!』
グレドプテラは若い男の声でそう叫ぶとドランノーガに攻撃を仕掛けるべく空中で大きく旋回を始め、それを見ながらピオンはいよいよ呆れたように呟いた。
「何ですか、あれは? 本当に子供じゃないですか。マスター、ドランノーガの高度は相手と同じか、より上を保ってください。間違ってもあの子供が乗るゴーレムトルーパーの下になってはいけません」
「分かった!」
『誰が子供だ!』
ピオンの言葉にサイは返事をしてドランノーガの操縦に集中し、グレドプテラは怒声を上げて先程と同じ突進を仕掛けてくる。
「当たるか!」
グレドプテラの突進は確かに速かったが、ピオンの言葉で怒ったせいか狙いが甘く、サイはピオンの忠告に従ってドランノーガを上昇させてグレドプテラの突進を避けた。
『っ! クソッ!』
「? さっきの光の玉は使わないのか?」
自分の攻撃を避けられて舌打ちをするグレドプテラを見ながらサイが疑問を口にすると、隣の操縦席に座るピオンが答える。
「さっき解析をした結果、どうやらあのグレドプテラは地上への爆撃に特化した機体のようです。だから自分より上の相手に攻撃する武装はほとんどないと思いますよ」
「……なるほど」
ピオンの説明を聞いてサイは、彼女がグレドプテラと同じか、より高い高度を維持するように言った理由を理解した。
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