受け入れた理由

「……ブリジッタさん。ミッシェルさん、この人の相手は私がしますから、貴女はもう一体のゴーレムトルーパーの方をお願いします」


『わ、分かりました』


 マリーがミッシェルの乗るゴーレムトルーパーを見ながら言うと、ブリジッタは彼女の言葉に従ってもう一体のゴーレムトルーパーの所へと向かって行く。ミッシェルもそれを止めようとせず、ザウレードを見送ってから外部音声を使いマリーに話しかける。


『マリー、いいのか?』


 ミッシェルがマリーに向けた短い言葉。それは父親の敵とも言えるザウレードと行動を共にしてもいいのかという意味で、言葉の意味を正しく理解しているマリーは小さく頷いてから答えた。


「はい。……正直、ザウレードの事を聞いた時は納得がいきませんでした。ですが今は任務であることを抜きにしても、大丈夫なつもりです」


『……何故だ? 何故そう思える?』


 マリーの返答に逆にミッシェルの方が困惑して思わず訊ねると、ゴーレムトルーパーの操縦室の中でマリーはどこか吹っ切れたような表情となり口を開く。


「合同部隊となったザウレードが各地で活躍をすれば、多くの人々がその強さを目の当たりにするでしょう。……そうしたらお父様は『盗賊に盗まれたゴーレムトルーパー』ではなく『強大な力を持つゴーレムトルーパー』との戦いで戦死したということになりますから」


『………そうか』


 マリーの言葉を聞いて何故彼女がザウレードを受け入れたのか、その理由が少しだけ分かった気になったミッシェルはただ小さく呟いた。そしてすぐにミッシェルが乗るゴーレムトルーパーは体勢を整え、上半身の騎士が手に持つ槍をマリーに向ける。


『マリー、お前の意思は理解した。だがこの模擬戦の勝利は譲らんぞ? こちらにも誇りというものがあるからな。あれしきの策で私達を崩せたとは思うなよ?』


 ミッシェルはマリーに向かって挑発するような台詞を口にするのだが、その言葉はどこか笑っているようだった。どうやらマリーの言葉は彼にも何か影響を与えたようであった。


 そして今回の作戦を立てたのが自分であると見破れたマリーは、自分もミッシェルのゴーレムトルーパーに向けて、自身のゴーレムトルーパーの武器を向ける。


「いえ、勝利は私達がもらいます。合同部隊の初任務、勝ち星で飾らせてもらいます。……『アルダニアン』!」


『………!』


 マリーの言葉を合図に彼女の乗るゴーレムトルーパー、アルダニアンはミッシェルのゴーレムトルーパーへと駆け出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る