ピオン達の密談
「それではしばらくの間、ここにいるのですね?」
「ああ、そういう事になった」
ピオンの質問にサイは頷いた。
グレドプテラの操縦士である青年をアイゼン王国の王都へと無事送り届けたサイ達合同部隊は、アイゼン王国より操縦士の少年の処遇を決めるまで王都で待機しているように指示を受けた。そして操縦士の少年はミスト王国の王子であるのでその扱いは非常に慎重になる為、処遇が決まるまでの時間は長くなるだろうとも言われていた。
「あの操縦士の青年の件が決まればまた忙しくなると思うけど、それまではゆっくりするように言われたよ」
サイがアイゼン王国から言われた命令をピオンに伝えると、彼女だけでなく彼女を初めとするサイに従うホムンクルスの女性達四人は大いに喜んだ。
「それは良かったです。最近移動ばかりでしたから、そろそろゆっくりしたいな、と思っていたんですよ」
「いい機会ですし、アイゼン王国の街をじっくり見て回りたいですね」
「はい。それにアイゼン王国のお料理とかも興味があります」
「マスター様、もし宜しければ一緒にそれらを見て周りませんか?」
いつの間にか待機中に、王都をピオン達と一緒に観光をして回る話になっていたが、それにサイは嫌な顔をする事なく頷いた。
「それはいいな。じゃあ、クリスナーガやブリジッタも誘ってみようか?」
考えてみれば最近任務や戦闘ばかり続いて、今まで自分を支えてくれたこの美女四人や婚約者二人に労っていないと考えたサイは、このアイゼン王国の観光で彼女達六人に楽しんでほしいと思った。
(そうなるとジェラードに王都の事を聞くべきなんだが……)
王都が初めてのサイは、観光を楽しむにはここに一番詳しい人間の話を聞くのがいいと思うのだが、ピオン達のような美人で巨乳な従者と婚約者達六人……いや、ブリジッタの護衛であるカーラも付いて来るだろうから七人か? とにかく巨乳な美人七人と王都を観光すると知ったら、ジェラードはそれこそ血の涙を流さんばかりの表情で嫉妬をするだろう。その事を考えてサイは内心で苦笑をするのだった。
(……さて、三人とも分かっていますね?)
サイが王都を観光して回る事を考えているのを見ながらピオンは「通心」で、自分と同じ主人に仕えるホムンクルス三人に話しかける。
(ええ、分かっていますよ。護衛の件でしょう? ヒルデ、例のミスト王国の人らしい気配はどうなっているの?)
(少数は数日前に私達から離れてミスト王国がある方へ向かいましたが、大多数は王都に潜り込んでいますね)
ヴィヴィアンに「通心」の力で話しかけられたヒルデは、同じく「通心」の力でヴェルリ砦から自分達の後をつけてきたミスト王国の者達だと思われる気配について報告をする。
(普通に考えれば報告をすると同時に、増援を呼びに行ったと考えるべきですね。ミスト王国にすればグレドプテラも操縦士である王子様も諦めるわけにはいきませんし、そろそろ何らかの行動を起こすはずです)
ローゼが「通心」の力で自分の考えを伝えると、他の三人のホムンクルスの女性達から頷くような気配が伝わってきて、ピオンが締めくくる。
(正直アイゼン王国とミスト王国との喧嘩には興味ありませんが、観光の邪魔をするなら話は別です。もしそのミスト王国の方が来たら私達で対処します。くれぐれもマスターに知られないように、この観光は何よりまずマスターに楽しんでもらわないといけませんからね)
度重なる任務や移動で疲れているのはサイも同じである。だからまずは主人である青年を休ませようとするピオンの提案に、ヴィヴィアン達三人は心の中だけで頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます