ミスト王国の密談

 サイ達合同部隊がアイゼン王国の王都に辿り着いた日の夜。王都にある酒場の隅にあるテーブルで六人の男女が何やら話をしていた。


「何とか辿り着きましたね」


 六人の内、唯一の女性がそう言うと、他の五人の男達が頷くが彼らの表情は緊張しているかのように硬かった。


「そうですね。……しかしクロエ殿、本当に彼らを追ってここまで来て良かったのでしょうか? もしかしたら王子はまだ……」


「ラッセルさん」


 五人の男の一人が自分と同じテーブルにいる女性に話しかけるが、クロエと呼ばれた女性は男の名前を呼ぶことで言葉を遮る。それによってラッセルと呼ばれた男も、自分が何を言おうとしていたかに気づき彼女に頭を下げて謝罪をする。


「も、申し訳ありません」


「いえ……。それにこれは前にも言いましたが、あの方は一刻も早くこの王都へ連れて行かなくてなりません。だったら最も警備が厳重なあの合同部隊によって、すでにこの王都に連れられているはずです」


 クロエ達はこのアイゼン王国の人間ではない。彼女達はグレドプテラの操縦士の少年の補佐と護衛としてついてきたミスト王国の人間であり、操縦士の少年を救助する為にサイ達合同部隊の後を追ってこの王都までやって来たのだ。


 クロエは、グレドプテラの操縦士の少年が合同部隊の手によってすでに王都に連行されていると考えており、その根拠を話すとラッセル達は納得したように頷いた。


「しかし、ここにいるとしてもどうやってお助けすれば……。私達だけではとても……」


「そんな事は分かっています」


 ラッセルとは別の男の言葉にクロエは即答する。


「その為に部隊の大半を本国に返し、救援の要請したのです。だから私達がすべき事は救援が来るまでの情報収集です。あの方がどこに捕われているか、例のモノが一体何処にあるか」


 ここでクロエが口にしたあの方とはグレドプテラの操縦士の少年、例のモノとはグレドプテラそのもののことで、それを理解したラッセル達五人の男は一つ頷いてから続きを聞くべく彼女を見る。


「無論どちらも重要な極秘情報で、あの方を連行した合同部隊でも知っている人物は限られているでしょう。ですから私達が狙うのは、情報を知っている可能性が高く、それでいて私達でも相手が出来ると思われる人物です」


「その人物とは一体……?」


 ラッセルに聞かれてクロエは自分達が狙う目標を口にする。


「合同部隊にいる四人のゴーレムトルーパーの操縦士。その中の一人が従者らしい四人の女性を連れていたでしょう? その従者の女性達を狙います」

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