公園での作戦会議
「……ん? もう朝か……」
サイ達合同部隊がアイゼン王国の王都に到着した日の翌日。サイは合同部隊がアイゼン王国から貸し与えられた宿泊用の建物の一室で目を覚ました。
「昨日は大変だったな……」
寝台の上で起き上がりながらサイは昨日のことを思い出しながら呟く。
今日サイは、ピオンを始めとするホムンクルスの女性の従者四人、ブリジッタとクリスナーガの婚約者二人、そしてブリジッタの護衛であるカーラとアイゼン王国の王都を観光することになっている。その為に昨日アイゼン王国の人間であるジェラードに王都について聞いてみたら案の定、血の涙を流さんばかりの表情で嫉妬されてそこに何故かビークポッドまで加わり、サイはジェラードとビークポッドのヤケ酒に夜遅くまで付き合うはめになったのだった。
「まあ、なんだかんだ言って王都の事を教えてくれたから助かったけど……。おっと、もうこんな時間か。早く準備しないと」
部屋の壁に備え付けられた時計を見て、王都の観光へ行く約束の時間が近い事を知ったサイは急いで服を着替える。
ちなみにいつもであれば同じ部屋、同じ寝台で寝ているピオン達の姿はなく、部屋にいるのはサイ一人だけであった。昨日ピオンは「こういうデートでは最初、男と女は別々に行動して待ち合わせの場所に行くものなんですよ」と言っていたので、すでに彼女達は建物を出て待ち合わせの場所で待っているのだろう。
サイにしてみれば同じ建物に泊まっていたのだから、一緒に出かけてもいいのではないかと思うのだが、こういう時は女性の意見に従う方がいいだろうと考えると身嗜みを整えるのであった。
(さて……。そろそろマスターが起きた頃でしょうか?)
サイが宿泊用の建物の一室で目を覚ました頃。待ち合わせ場所である王都の公園でピオンは、サイの行動を予測していた。
公園にはピオンと、彼女と同じサイに従う三人のホムンクルスの女性達の姿しかなく、ピオンは自分達の他に人間がいない事を確認してからヒルデに話しかける。
「それでヒルデ? 『彼ら』の位置は分かりますか?」
「はい。この公園から離れた場所で私達を監視しています。どうやら彼らは私達が狙いのようですね」
「ふむ……」
ピオンの質問にヒルデが答えると、彼女は可愛らしく尖らせた唇に指を当ててしばらく考える。
「私達が狙いですか……。これは好都合と考えるべきか、それとも厄介だと考えるべきか……」
そこまで言ってピオンは一旦言葉を切ると、自分の考えをまとめてヴィヴィアン、ヒルデ、ローゼの三人を見る。
「分かっていると思いますが、今回のデートではマスターに楽しんでもらうのが第一。マスターだけでなく、ブリジッタさんにクリスナーガさん、カーラにも彼らの事を知られてはいけません。ですからデートをしつつ、私達の中で気づかれる事なく動ける一人か二人が彼らを撃退、他は撃退をする人のサポート。いいですね」
『『………』』
ピオンがそう言うとヴィヴィアン、ヒルデ、ローゼの三人は異論がないらしく頷いてみせた。
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