ピオンの提案
「来ていきなりかよ……」
サイ達合同部隊がヴェルリ砦に到着してから数時間後。砦の城壁の上でジェラードが彼方を見ながら呟いた。
ジェラードの視線の先には暗黒領域からこのヴェルリ砦にやって来るモンスターの群れの姿があった。モンスターは芋虫に似た外見をしていたが、その大きさは十メートル以上あり、それが何十匹も一斉に向かってくる光景は恐怖の他にある種の嫌悪感を感じさせる。
ヴェルリ砦の城壁にはジェラード以外にもサイ達もいて、ピオンが近くにいた砦の兵士に話しかける。
「あのー、モンスターの襲撃ってこんなに頻繁にあるんですか?」
「い、いえ! 今までモンスターの襲撃は二日や三日に一度ある程度でした!」
ピオンがサイの従者、つまりはゴーレムトルーパーの操縦士の一人であることはすでにヴェルリ砦の兵士のほとんどに知られており、彼女に話しかけられた兵士は姿勢を正して答える。
「あら、それはタイミングが悪かったですね。いえ、むしろタイミングが良かったのでしょうか?」
「何を呑気なことを言っているの。早く出撃するわよ」
兵士の言葉を聞いてそう呟くピオンにマリーが言うと彼女は自分のゴーレムトルーパーに向かって走り出そうとする。しかしそれをピオンが止める。
「いえ、マリーさん達は出ないでください。ここはマスターと私達、ドランノーガだけで行きます」
「えっ!?」
ピオンの発言にブリジッタが驚きの声を上げてピオンを見る。他の者達も声こそ上げてはいないがブリジッタ同様に驚いた顔となってピオンを見ていた。
「貴女、こんな状況で何を勝手なことを言っているの?」
「こんな状況だからこそですよ」
ピオンはマリーの言葉に返事をすると周囲を見回した。
周囲にはこのヴェルリ砦の兵士達が大勢いて、彼らはサイ達合同部隊の到着で一時は希望を取り戻していたが、モンスターの登場でまた不安そうに表情を曇らせていた。
「ここの兵士の皆さんは全員疲れ果てていて心も折れかけています。ですがそんな時だからこそ、あのモンスターを一気に殲滅したら皆さんも元気になると思いません?」
ピオンの言いたいことは分かる。確かにこの状況であの巨大な芋虫みたいなモンスターの群れを一掃出来ればヴェルリ砦の兵士達の士気も一気に上がるだろう。
「ドランノーガならそれが出来ます。ねっ、
マスター?」
「そうだな。出来ると思う」
ピオンに話しかけられてサイは苦笑を浮かべて頷き、他の三人のホムンクルスの女性達も同様に頷く。
いきなりドランノーガ単騎でモンスターの群れと戦うことを提案されたのには驚いたが、それでもピオンの考えはそれほど間違っていないとサイは考え、ジェラードとマリーとブリジッタ、同じ合同部隊の操縦士達の顔を見る。
「それですまないけど、今回は俺達に任せてくれないか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます