グレドプテラを探す者達

「グレドプテラはまだ帰っていないのですか?」


「は、はい。未だグレドプテラの姿はどこにも見えませんです」


 アイゼン王国の領地と暗黒領域の境界線にある山で、軍服を着た女性が十数人の鎧を着た兵士らしき男達に聞くと、その中で代表者と思われる一人の鎧を着た男が落ち着かない様子で答える。


「クッ! こんな事だったらドランノーガの事を話すべきではなかった……!」


 鎧を着た男の言葉に軍服を着た女性は思わず爪を噛んで苦々しく呟く。そうして彼女の脳裏に思い浮かぶのは、昨日何やら興奮した様子でフランメ王国に新しく現れたゴーレムトルーパー、ドランノーガについて聞いてくる少年の顔。


 どう考えても少年が本国からの命令を無視してグレドプテラを出し、未だ帰ってこないのは聞かれるまま少年にドランノーガの情報を伝えたことが原因だ。やはり他国のゴーレムトルーパーの事だから、詳しい情報は知らないと言うべきだったと軍服を着た女性は思うがすでに後の祭りである。


「あ、あの……。やはり我々も探しに行くべきなのでは?」


「探しに行く? 私達がグレドプテラを?」


 鎧を着た男が躊躇いがちに軍服を着た女性に言うと、彼女はまるで馬鹿を見るような目をして聞き返した。


「ここは暗黒領域のすぐ近くですよ? 我々がグレドプテラ無しでウロウロしていたらすぐにモンスターに襲われて終わりですよ?」


『『……………』』


 軍服を着た女性の言葉に探索をするべきではと発言した鎧を着た男だけでなく、他の兵士達も全員顔を青くして黙ってしまう。


 そう、ここは暗黒領域のすぐ近く。通常のモンスターよりも凶悪なモンスターがいつ出現してもおかしくない、こんな少人数だけでいては命がいくつあっても足りない危険地帯なのである。


「……しかし、確かにこのまま何もせずに私達だけ本国に帰るわけにもいきませんね」


 この辺りの危険性を理解しつつも、鎧を着た男の言葉にも一理あると思い直した軍服を着た女性はしばらく考えた後、ある方向を見た。


「そうですね……。とりあえず『あそこ』だけでも調べてみましょうか?」


 軍服を着た女性が調べようと思ったのは、グレドプテラが行っている可能性が高く、それでいて自分だけでも何とか移動することができる場所。彼女が見ている先はアイゼン王国のヴェルリ砦がある方角であった。


「はぁ……。皆さん、私達は今からヴェルリ砦へと向かいます。急いで準備を」


『『はっ!』』


 大きなため息をついてから覚悟を決めた表情となった軍服を着た女性の言葉に、鎧を着た男達は全員、敬礼をして返事をして移動の準備をするべくその場から離れて行く。そして鎧を着た男達がいなくなった後で彼女はもう一度ため息をついた。


「はぁ……。どうしてこうなったのでしょう? 昔はあの方も大人しかったのに、あのグレドプテラを見つけてからすっかり人が変わってしまって……」

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