ピオンの不満

「むう〜、納得いきません」


 ドランノーガの主砲カロル・マーグヌム・コルヌで芋虫のモンスターの大群を消し飛ばしてヴェルリ砦に戻った後、ピオンは不機嫌そうな表情でそう言った。


「何が納得いかないんだよ?」


「決まっています。あの砦の兵士達の態度のことです」


 サイに聞かれてピオンは自分が不機嫌である理由を口にする。


「せっかき私達がドランノーガの主砲であのモンスターの大群を焼き払いこの砦を救ってあげたのに、砦の兵士達どころか合同部隊の隊員達ですら感謝の言葉の一つもなく、まるで化け物を見るよう目で私達を見てくるんですよ?」


「あー……その事か……。でもそれは仕方がないんじゃないか? 俺だって初めてドランノーガの主砲の威力を見た時は驚いたし」


 ピオンが不機嫌な理由を聞いたサイは納得すると同時に、砦の兵士達と合同部隊が化け物を見るような目で自分達を見てくる理由も理解できた。


 確かにドランノーガの主砲カロル・マーグヌム・コルヌによって芋虫のモンスターの大群は退治されヴェルリ砦は救われた。もしこの場にドランノーガがいなければ、例えゴーレムトルーパーが複数いても苦戦を強いられ、砦にも少なくない被害が出ていただろう。


 そういう意味ではピオンの言う通り、単騎でモンスターの大群を退けたドランノーガとそれに乗るサイ達はもっと褒め称えられてもいいかもしれないが、ドランノーガの主砲の威力はそれ以上に衝撃的であったのだ。一撃で百を超えるモンスターの大群を消し飛ばし、地形すら変える威力に砦から戦いを見ていた者達が感謝の念よりも畏怖の念を懐くのは仕方がないことだろうとサイは思う。


「ほら、ピオン。マスター殿もこう言っているのだし機嫌を治したら?」


「そうですね。愛しのマスターが冷たい目で見られるのは私達も哀しいですが、それをいつまでも気にしていてはいけませんよ?」


「むしろこれがきっかけで合同部隊、四ヵ国の軍人達がドランノーガを、マスター様を無視できなくなった。そう考えれば楽しいと思いませんか?」


 サイの言葉の後にヴィヴィアン、ヒルデ、ローゼの順で言われてピオンも渋々とだが機嫌を治す。


「なんですか皆して私を駄々っ子みたいに扱って……。分かりましたよ。この話はこれで終わりにしましょう」


「すまないな、ピオン。他の皆は砦の会議室で明日の任務の打ち合わせをしているし、俺達もそろそろ行こうか?」


 ピオンに一言謝ってからサイが皆が集まっている砦の会議室へ行こうと言うと、それにピオンが反応して自分の主人である青年を見上げる。


「明日の任務? 明日、何が行われるのですか?」


「ああ、ピオンは聞いていなかったか? 明日、俺達合同部隊のゴーレムトルーパー四体で暗黒領域の調査に行くんだよ」

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