苛立つ二人の王

「あの……。二機のゴーレムトルーパーが睨みあっているって、まだ勝負の決着はついていないのですか?」


 フランベルク三世の言葉を聞いてクリスライドが質問をする。


「そうだね。報告書では硬直状態にあると書かれていたが?」


「クリスライド、一体どうしたんだ?」


 フランベルク三世がクリスライドの質問に答えた後にサイが聞くと、クリスライドは額に指を当てて何かを思い出しながら話し出す。


「その二機のゴーレムトルーパー……。片方に乗っているのは国王本人で、もう片方はミスト王国でも指折りの軍人であるノルド将軍が乗っているはずです。でも、国王はゴーレムトルーパーの操縦士だけどまともに戦に出たことがなくて、歴戦の操縦士のノルド将軍と戦ったらすぐに勝負がつくはずなんですけど……」


「そういえばノルド将軍の名前は俺も聞いたことがあるな」


 クリスライドの言葉に、今まで何度もミスト王国と小競り合いをしてきたアイゼン王国出身のジェラードが思い出したように呟く。


 確かに、ゴーレムトルーパーの操縦士はその国の主導者がなる場合がほとんどだが、ゴーレムトルーパーを複数所有している国であった場合、単なる国の象徴として戦場に出ないこともあり得る。そしてミスト王国の国王は、その国の象徴の役割しか果たしていなかったようだ。


 戦闘経験どころか満足にゴーレムトルーパーを動かしたことがあるのかすら怪しいミスト王国の国王と、長い間ゴーレムトルーパーに乗って敵国のゴーレムトルーパーやモンスター相手にいくつもの戦闘を経験してきた将軍が戦えば、どちらが勝つかは火を見るより明らかであった。しかしそれなのに勝敗が今だについておらず硬直状態であるという事実にクリスライドが疑問を感じていることを、サイ達は今の会話で理解した。


「……もしかして国王が隠れた実力者だったとか?」


「いや、そんな理由じゃねぇよ」


 マリーが予想を口にするが、それを不機嫌そうな表情をしたバルベルトが否定する。


「ミスト王国の国王はな、王都のど真ん中にゴーレムトルーパーを置いているんだよ。自分達が守るべき王都を、国民を盾にされてノルド将軍はまともに戦うことができないんだよ」


『『………!?』』


 ミスト王国の国王がとった戦法にサイ達は思わず絶句し、バルベルトと同じく不機嫌そうに目を細めたフランベルク三世が重々しく告げる。


「話は聞いての通りだ。この様な恥知らずな行為は国を統べる者して絶対に許すわけにはいかない。フランメ王国、アックア公国、ソル帝国、アイゼン王国。我々四ヶ国はミスト王国の内乱への介入を決意した。その為、君達『キマイラ』には先遣隊としてミスト王国へと向かってほしい」

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