ミスト王国に向かって

「ミスト王国にはこの十人で向かいましょう」


 フランベルク三世がサイ達「キマイラ」に先遣隊としてミスト王国に向かうように命じた後、王宮にあるゴーレムトルーパーの格納庫でマリーが提案した。


 マリーが言った十人とはまず発案者であるマリー、サイとピオンを始めとする彼に従うホムンクルスの女性達四人、ブリジッタとカーラ、ジェラード、そして最後にクリスライド。全員がゴーレムトルーパーの操縦士であった。


「ゴーレムトルーパーだけでミスト王国の内乱に介入するのか?」


 ジェラードの質問にマリーは一つ頷いてから答える。


「そうよ。ゴーレムトルーパーに対抗できるのはゴーレムトルーパーだけ。だからまずゴーレムトルーパーだけで先にミスト王国に行って、残りの『キマイラ』は後から来てもらうの。私達だったらそれができる。そうでしょう?」


 確かにゴーレムトルーパーは惑星イクスの最強の兵器であり、それを持たない兵士がいくら駆けつけても大した役には立たないだろう。マリーはそう言ってサイの方を見る。


「まずサイの『倉庫』の異能でドランノーガとグレドプテラ以外のゴーレムトルーパーを収納。そして私、ブリジッタさんにカーラさん、ジェラードはドランノーガかグレドプテラに乗ってミスト王国に向かう。そうすれば短時間で到着できるはずよ」


 フランメ王国からミスト王国まで、馬や馬車では距離だけでなく地形の関係で十日、あるいはそれ以上の時間がかかる。しかし今マリーが言った方法でなら半分、いやそれ以上に短い時間で五機のゴーレムトルーパーをミスト王国へ送り込むことが出来る。しかし……。


「クリスライド君。君は大丈夫か? ミスト王国に関わっても?」


 サイがクリスライドに質問をする。


 クリスライドを「キマイラ」の一員とすることはアックア公国、ソル帝国、アイゼン王国の三ヶ国も、ミスト王国の内乱を早期解決せねばならないという理由で一時的に認めてくれていた。だがフランメ王国に亡命したとは言え、ミスト王国の王族であった彼が今ミスト王国に行くと、様々な問題が起こるのではないかとサイは思ったのだ。


 だがクリスライドはサイに一切に迷いの無い視線を向けて返事をした。


「大丈夫ですよ、お義兄さん。むしろこれはいい機会です。ここで貢献をすれば俺もクロエ達もフランメ王国以外の国からも認めてもらえるはずですから。……それにあのクソ親父ミスト王国国王は以前から一発殴ってやりたかったですし」


「決まりね」


 サイとクリスライドの会話を聞いていたマリーがそう言うと、この場にいる他の者達もクリスライドの決意を認めて頷いた。


 そしてその数十分後、フランメ王国からミスト王国に向かって二つ大きな影、ドランノーガとグレドプテラが空を飛んで行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る