ローゼの説明

「一体どういう事なんだ? すまないけど最初から説明してくれ」


 暗黒領域のモンスターの活動が活発になった理由があのグレドプテラにあると聞かされたサイは、詳しい事情をグレドプテラの操縦士である少年から尋問したローゼに聞く。


「はい。始まりは今から半年程前にミスト王国のとある場所で前文明の遺跡が発見された事でした。その遺跡には前文明の軍事基地のようなものでして、そこにグレドプテラがあったようです」


 前文明の遺跡と聞いてサイは、自分と同じようにゴーレムオーブから新しく空を飛べるゴーレムトルーパーを作り出したのかと思ったが、グレドプテラは前文明時代に誰かが作ったのを利用したものらしい。


「グレドプテラを発見したミスト王国は、この空を飛べるゴーレムトルーパーを軍事的に利用しようと今まで秘密裏に性能を研究していました」


「まあ、それはそうよね」


 ローゼの言葉にクリスナーガが頷く。例えグレドプテラが空を飛べなくても、ゴーレムトルーパーはそれだけで強力な武力になるのだから軍事的に利用しない手はない。


「そしてグレドプテラの機体性能の研究が大体終わると、ミスト王国は次に攻撃性能の研究に移りました。その為の実験場として選んだのが……」


「この暗黒領域というわけか」


「はい」


 説明をしているローゼの言葉の続きをサイが先に言うと、彼女はそれに頷いた。つまりグレドプテラをモンスターと戦うことで攻撃性能の研究をしていたという事で、もう大体の事情が分かった気がするのだが、まだ少しだけ気になる点があった。


「何でわざわざ暗黒領域で実験なんかしたんだ? 下手をしたらアイゼン王国に知られるかもしれないし、最悪グレドプテラがモンスターに破壊されることもあり得るんだぞ?」


 モンスターと戦わせてグレドプテラの攻撃性能を研究するのは分かる。しかしモンスターと戦わせたいのならミスト王国にだってモンスターはいるはずだ。敵国に近いアイゼン王国の近くで、他のモンスターより凶悪な上に空を飛べるのもいる暗黒領域のモンスターを標的にする理由がサイには分からなかった。


「それはアイゼン王国への嫌がらせのためです」


「………嫌がらせ?」


 質問に答えるローゼにサイは言葉の意味が分からず僅かに間を開けて聞き返す。


「はい。ミスト王国は暗黒領域のモンスターを攻撃して挑発する事でモンスターがアイゼン王国へ侵攻するのを期待して、暗黒領域で実験をする事に決めたそうです。そして実際、ミスト王国の期待通りアイゼン王国は少なくない被害を受けました」


 ローゼの言う通り、グレドプテラが原因で起こった暗黒領域のモンスターの侵攻によってアイゼン王国は少なくない被害を受け、保有しているゴーレムトルーパーの一体を中破している。これは「嫌がらせ」と言うには大きすぎる損害だろう。


「なるほどね。……これはアイゼン王国は荒れるでしょうね」


 ローゼの説明を聞き終えてクリスナーガが呟くと、この部屋にいる全員が彼女の言葉に頷くのであった。

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