懐かしのアックア公国首都
サイ達がビークポッドと再会してから五日後。サイ達を迎えたアックア公国の一団は特に問題なくアックア公国の首都へと到着した。
人類の生活圏の中心にあるアックア公国の首都は、常に様々な国からの人々が往き来していて、まるで祭りのような賑わいを見せていた。そんなアックア公国の首都の様子を見てサイは懐かしそうな顔となる。
「懐かしいな。この賑やかで色んな国の訛りが聞こえてくる街並み。これを見ると帰ってきたって気になるな」
「ええ、そうですね」
サイの言葉にブリジッタが頷いて同意するのだが、それを聞いたクリスナーガが苦笑を浮かべる。
「なんというか……サイ達がアックア公国に留学していたのは知っていたけど馴染みすぎじゃない? サイってばフランメ王国民だよね?」
「それはそうなんだけど……。イーノ村以外でまともに見て回ることが出来たのはここが初めてだったからな……」
「そうなのか? サイは我が国に来る前はフランメ王国の王都にある士官学校に入学していて、三年間王都で暮らしていたのではないのか?」
クリスナーガの言葉にサイが答えると、それを聞いていたビークポッドが首を傾げてサイに訊ねる。
「フランメ王国の士官学校かぁ……。あの頃は実家からの仕送りはほとんど学費に消えて、授業がない時間は生活費を稼ぐためにアルバイトをしていたからな。あと、同じ士官学校の生徒や先生から雑用を押し付けられて、王都を見る機会なんてなかったな」
ビークポッドの質問にサイがフランメ王国の士官学校時代を思い出しながら答えると、場の空気が一気に重くなり、やがてピオンが俯きながら呟いた。
「あの人達……やっぱりあの時に制裁をするべきでしたね……!」
フランメ王国でサイ達の婚約パーティーが行われた時、ピオンはサイを見下していた士官学校時代の同級生達を集めて何らかの制裁をしようと考えていた。結局その時は同級生達が一斉に謝罪した上にサイも許すと言ったので何もしなかったのだが、こうして本人の口から士官学校時代の話を聞かされると、ピオンの中で再び怒りの炎が生まれたのだった。
「ピオン。その時は私にも声をかけて。私も全力で彼らに制裁するから……!」
「ええ……ええ……。そうですね。今回ばかりは仕方がありません。愛しのマスターを哀しませないためには仕方がありません」
「フフッ。彼らがマスター様を見下した罰を受けた時、どんな表情をするのか今から楽しみですね」
そしてサイを見下していたフランメ王国の士官学校時代の同級生達に怒りを覚えていたのはピオンだけでなく、ヴィヴィアンにヒルデにローゼまでもがピオンの言葉に同調していた。そして自分に従う四人のホムンクルスの女性達が物騒なことを言い出したのを聞いたサイは、話題をそらそうと慌ててビークポッドに質問をする。
「そ、そういえばビークポッド? 婚約パーティーの前にアックア公国軍と合同の任務をするって話なんだが、どんな任務か知っているか?」
「ん? ああ、そうだな。俺が聞いた話だと予定されている合同任務は二つで、そのうちの一つは最近発見された前文明の遺跡の調査らしいぞ」
「………!?」
サイの質問に答えたビークポッドの口から前文明の遺跡という単語が聞こえた瞬間、ブリジッタの目が輝いた。
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