意外な事実

 時は少し戻り、ドランノーガの操縦室でヴィヴィアンの報告を聞いたサイは驚きの声を上げた。


「海から大きな生命反応だって!?」


『私の方でも確認できました。恐らくはモンスターかと』


『モンスターの反応は私達がいる陸に高速で向かって来ています』


 サイの言葉にヒルデとローゼが答え、二人の報告を聞いてピオンが、隣の席に座る自分達の主人である青年に指示を求める。


「マスター、どうしますか?」


「……………予定通りモンスターの群れを攻撃する」


 ピオンに聞かれたサイは数秒間考えた後に結論を出した。


「モンスターの群れを無視したら砲兵隊や補給部隊に被害が出るかもしれない。まずはビアンカ元帥とモンスターの群れを倒してから新しく現れたモンスターを相手する。……行くぞ!」


『………!』


 そこまで言ってサイが操縦席に自分の意思を伝えると、ドランノーガは操縦士の指示に従い空を飛んでモンスターの群れにと向かった。するとビアンカもサイと同じ判断を下したのか、ヴァイヴァーンもまたモンスターの群れに向かっているのが見えた。


「ヴァイヴァーンと連携してモンスターの群れに攻撃する。いいか、できるだけ早く全て倒……!?」


「ーーーーーーーーーー!」


 ドランノーガを操縦士ながらピオン達に攻撃指示を出そうとしたその時、遠くから雷のような咆哮が大気を震わせ、その場にいる全ての生き物が動きを止めた。


「な、何だ、今の声……なのか?」


「あちらの方から聞こえてきましたが……あれは、亀?」


 突然の咆哮にサイが攻撃指示を中断し、咆哮が聞こえてきた先を見たピオンが亀に似たモンスターを発見する。


『新しい生命反応はあの亀のモンスターのようですね』


『あのモンスター、身体の大きさが尋常ではありません。全高がドランノーガの半分はあります』


『というかあの亀さん、何か興奮していませんか?』


 操縦室の壁に映る小画面から亀のモンスターを確認したヴィヴィアン、ヒルデ、ローゼがそれぞれ意見を口にする。そしてローゼが言った通り、拡大画面に映る亀のモンスターはモンスターは何やら頭や脚、尻尾を忙しなく動かして興奮している様に見えた。


「言われてみれば確かに……。でも一体どうして興奮しているんだ?」


 サイがそう言った直後、亀のモンスターは驚くべき行動を行った。亀のモンスターが六本ある脚を屈めたかと思うと、脚の筋肉が膨れ上がり、次の瞬間には前方に勢い良く跳躍したのに加えて頭部と脚を甲羅に収納してから回転を起こし自らを砲弾としたのだ。


『『………!?』』


 この亀の跳躍にはこの場にいる全員が驚き絶句した。


「なっ……!? 亀ってジャンプできるのかよ!?」


「いえ、あれは亀に似てるだけのモンスターですから……って! どれだけの飛距離があるんですか!?」


 あまりに常識外れの光景にサイ達はドランノーガに搭載された兵器で迎撃するのも忘れ、亀のモンスターはその隙を突いてドランノーガ……ではなく、猪に似たモンスターの群れに自らの巨体をぶつけた。猪に似たモンスターの群れは、その大半が亀のモンスターの巨体に押し潰されて血肉と化し、その後亀のモンスターはサイ達には目もくれず、自分が今作った猪に似たモンスターの挽肉を地面ごと食べ始めた。


『モンスターがモンスターを食べてる……!?』


『もしかしてあの亀のモンスター……猪のモンスターを、自分の獲物を横取りされたと思って怒っていたのでしょうか?』


 ヴィヴィアンとヒルデが突然食事を始めた亀のモンスターを見ながら思わず呟き、それを聞いたローゼが一つの予想を口にした。


『そういえば前にビークポッドさんが、この辺りには猪のモンスターが現れたことがないと言っていましたね? それって現れないのではなく、あの亀のモンスターが食べていたのでは?』


「……多分そうだと思います」


「同感」


 ローゼの予想を聞いたピオンが呟き、サイもそれに頷き同意した。

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