宇宙の巨像

 ピオンの呟きを聞いてサイ達が彼女の視線の先を見ると、宇宙の人々が乗ってきた巨大な船の船体の一部が開いており、そこから巨大な影が現れようとしていた。宇宙の人々の船から現れたのは独りでに動く鋼鉄の巨像で、この場にいる全員の視線が最初に集まったのは巨像の人の形をした上半身であった。


 その上半身は人を模した像と言うよりも、いくつもの金属の塊を人の形になるように繋ぎ合わせたような印象で、頭部を見てみると一つの金属製の眼球が顔に当たる部分の全てを占めており緑色の光を放っていた。


 そして上半身の下を見ると馬車の車両のようなものが、重そうな音を立てながら左右に四輪ずつある車輪を動かしてその鋼鉄で作られた巨体を前に進めている。


 上半身が人の形で下半身が人ではないという外見をした鋼鉄の巨像。


 それを見てサイ達はすぐさま全員同じ存在を連想した。


「ゴーレムトルーパー……か?」


「確か似ていますね」


「人の上半身による攻撃の汎用性と車両の下半身による移動力。宇宙の方々のゴーレムトルーパーと言ったところでしょうか」


「見てください。他にも出てきますよ」


 サイの呟きにローゼとヒルデが同意するとヴィヴィアンが宇宙の人々が乗ってきた船を指差す。すると船から全く同じ外見をした二体三体と出てきて、合計で四体の上半身が人で下半身が車両の巨像が現れた。


『『……………!』』


 船から出てきた宇宙のゴーレムトルーパーと言うべき四体の巨像を見て、サイ達は思わず言葉を失い、シェーヴィル同盟の文官達は今にも気絶しそうなくらい顔色が悪かった。だがこの反応は惑星イクスに生きる者達にとってある意味当然のことと言えた。


 ゴーレムトルーパーは一体あるだけでも周辺の小国を支配できるだけの武力となり、二体以上あればその国は「強国」として認識される。サイ達の部隊は例外中の例外であり、突然強国並みの戦力を持った勢力が空から降ってきて交渉を持ちかけてきたなど、シェーヴィル同盟からすれば悪夢でしかないだろう。


「なるほど……。確かにこれは宇宙の人達も自信があるはずですね」


 驚く自分の横に立ちながらピオンは、冷静に宇宙の人達の船から出てきた巨像を見上げる。


 今思えば宇宙の人達は、交渉中ずっとどこか余裕のようなものあるように感じられていた。それは最終的にはこの戦力による強攻策、人類が住んでいない大陸の西側をモンスターを退治して開拓するという選択肢があったからなのだろう。


「しかし、あれがゴーレムトルーパーと同じだけの戦力があるかは疑問ですけどね」


『言ってくれるわね、お嬢ちゃん?』


 巨像を見上げながらピオンがそう言うと、四体ある巨像の一体から若い女性の声が聞こえてきた。

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