意外な報告
「マスター。獲物が『餌』にかかったようです」
サイ達がミスト王国から来る軍人達の対策を考えた日から三日後。宿泊用の建物の一室でピオンがサイに向かってそう言った。
「そうか。それじゃあ、作戦は今のところは成功のようだな」
ピオンの言葉にサイは満足そうに頷いた。彼女が言った「獲物」とはミスト王国からの軍人達のことで、彼らを捕まえるための作戦は順調に進んでいた。
サイ達が考えた作戦は、以前ピオンが捕まえたクリスライドの部下の一人の男を囮にして、ミスト王国からの軍人達を一箇所に集めて捕まえるというものであった。どういうわけか捕まえたクリスライドの部下の男は異常なまでにピオンを恐れており、彼女に言われるまま囮役になってくれた。
そして囮役の男を待ち合わせ場所にしていた酒場に待機させているとミスト王国からの軍人達が接触してきて、それを「感知」の異能で監視していたヒルデが「通心」の力でピオンに報告してくれたのだ。
「分かったわ。それじゃあ、早速軍の人達に伝えてくるわね」
サイ達と同じ部屋にいてピオンの話を聞いていたクリスナーガが自分の異能を使いアイゼン王国の軍へ向かおうとするがそれをピオンが止める。
「いえ、その必要はありません。丁度今、ヴィヴィアンがアイゼン王国軍の詰所に、ローゼがジェラード様を含めた隊員達の所にいますからすでに『通心』の力で連絡をしました」
「……相変わらず、反則的な情報のやり取りの速さね。連絡係の仕事を取らないで欲しいのだけど?」
ピオン達の仕事と連絡の速さにクリスナーガが苦笑を浮かべて愚痴を言う。
とにかくこれですぐにミスト王国からの軍人達も捕縛する事ができ、自分達の任務も終わるだろう。サイ達合同部隊……いや、「キマイラ」の隊員達は全員そう考えたのだが、その考えは数十分後に覆される事となる。
「何ですって!?」
サイ達が他の「キマイラ」の隊員達とミスト王国からの軍人達を捕縛する準備をしていた時、突然ピオンが声を荒らげた。その様子にサイだけでなく「キマイラ」の隊員達全員が彼女の方を見る。
「ピオン? 一体どうしたんだ?」
サイが聞くとピオンは何やら戸惑った表情を浮かべて自分の主人である青年を見て口を開いた。
「その……今ヒルデから報告がきたのですけど……。囮役になってくれた方が……ミスト王国からの軍人達に殺されてしまったそうなんです……」
『『……………!?』』
戸惑いながら言うピオンからの報告に、サイを初めとするその場にいる全員が驚愕の表情を浮かべるのだった。
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