緊急出動
「ピオン? 囮役が殺されたって一体どういうことだ?」
意外なピオンからの報告に「キマイラ」の隊員達全員が驚き、サイが代表して彼女に質問をするが、彼女はそれに対して首を横に振る。
「分かりません。連絡をくれたヒルデも『感知』の異能で囮役の方の生命反応が消えたことしか分からないみたいです。ですが状況から考えて……」
「ミスト王国から来た軍人達が囮役を殺したってことか」
「恐らくは」
ピオンの言葉の途中でサイが言うと彼女は頷いてみせた。
「これは軍人達の確保は止めといた方がよさそうだな。嫌な予感がする。……ピオン」
サイは少し考えてからピオンの名前を呼ぶ。するとそれだけで赤紫色の髪のホムンクルスは全てを理解してもう一度頷いた。
「はい。ヴィヴィアンとローゼにはすでに連絡をしています。ヒルデもこちらへ戻ってきているそうです」
「そうか。……あの、クリスライド達が今何処に、何人いるか分かりますか?」
サイが近くにいた「キマイラ」の隊員に、クリスライドを初めするすでに捕まえてあるミスト王国の軍人達のことを聞くと、聞かれた隊員は姿勢を正して答えた。
「は、はい! クリスライドとその補佐と思われる男女の三名は王城に。残りの四名は監禁用に借り受けた四軒の建物に、それぞれ一人ずついます」
サイ達が捕まえているミスト王国の軍人でクリスライドとクロエを除く全員は「超人化」の異能のような戦闘系の異能の使い手であった。そして戦闘系の異能を持つ捕虜は協力をして脱走されるのを防ぐため、一ヶ所に集めるのではなく少人数に分けて別々の場所に捕らえるのが、惑星イクスの常識である。
だから「キマイラ」の隊員が言った言葉にサイは納得するしかないのだが、今回ばかりは舌打ちしたい気分であった。ミスト王国の軍人達が本来は見方であるはずの囮役の男を殺したということは、クリスライドを初めとする他の捕虜にも危険が及ぶ可能性が充分にあるからだ。
「面倒なことになってきたな……。ミスト王国の奴ら、何を考えているんだ?」
「やはり口封じでしょうか? グレドプテラの一件を知られないようにするために……?」
「可能性はあるかもだけど、クリスライドはゴーレムトルーパーの操縦士で自国の王子だぞ? そこまで無茶苦茶するか? ……まあ、いい」
そこまで言うとサイはピオンとの会話を切り上げて「キマイラ」の隊員達を見て口を開く。
「予定変更。俺達は今から一番近い捕虜の所まで向かいます。もしかしたら戦闘になるかもしれないので、皆さん注意してください」
『『はっ!』』
サイが出した指示に「キマイラ」の隊員達は揃って敬礼を返し、その後サイを含めた「キマイラ」の部隊は、ミスト王国の捕虜の一人がいる所まで出動したのだった。
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