シェーヴィル同盟唯一の都市

 サイ達がフランベルク三世にシェーヴィル同盟へと向かうように指示をされてから数日後。彼らは自分達と同じ命令を出されたビークボッド、ジェラード、マリー達とミスト王国で合流をすると更に北へと向かった。


 シェーヴィル同盟へと向かったメンバーは、サイを初めとする「キマイラ」のゴーレムトルーパーの操縦士とその関係者に、サイ達の補佐を命じられたクリスナーガにビークポッド。そしてフランベルク三世に同行するように言われた、サーシャと同じ士官学校の生徒であるラン。


 より詳しく言えばフランメ王国からはサイ、ピオン、ヴィヴィアン、ヒルデ、ローセ、クリスナーガ、クリスライド、ランの八名。


 アックア公国からはブリジッタ、ビークポッド、カーラの三名。


 ソル帝国とアイゼン王国からはマリーとジェラードの一名ずつ。


 合計で十三名と、数だけをみれば国同士の重大な案件に取りかかる一団として心許ないかもしれないが、その内の五人がゴーレムトルーパーの操縦士と考えればむしろこれ以上ない戦力だと言えるだろう。


「うわ~……。これってば私、場違いなんじゃないですか?」


 自分以外のメンバーが、フランメ王国を初めとする四ヶ国の合同部隊で活躍している事実に、ランが腰を引けたように言うと、それを聞いたピオンが彼女に話しかける。


「いえいえ、そんなことはありませんよ。陛下が私達にランさんを同行させるように言ったということは、ランさんの知識がきっと役に立つということ。もっと自信を持ってください」


 ランに向けたピオンの言葉にこの場にいる全員が頷いた。


(陛下が彼女を同行させたということは……つまり『そういうこと』なんだろうな)


 ランに視線を向けながらサイが心の中で呟く。


 この場にいる全員は、ランが宇宙から来た「元」諜報員であることを知っている。その彼女を同行させたということは、今回の件はランと同じ宇宙から来た者達に関する案件だと、サイ達は考えていた。


「そ、そうですか? 分かりました。……それでシェーヴィル同盟には向かわないんですか? もう一時間くらいここにいますけど?」


 ランはサイ達にそう訪ねると辺りを見回した。現在彼らがいるのはシェーヴィル同盟の領土とされている草原で、彼女の言う通りサイ達は一時間程この何もない草原で待機をしていた。


「ここでいいのよ。ほら、向こうから来てくれたわ」


 マリーはランに言うと、遥か彼方に見える山の影を指差した。


「山? さっきまで山なんて……ええっ!?」


 ランはマリーが指差した山を見た次の瞬間、驚きで目を見開いた。


 マリーが指差したのは山ではなかった。彼女が指差したのは、鋼鉄で造られた獣の巨像、ゴーレムトルーパーであった。


「あれがシェーヴィル同盟唯一の都市。この国の人達は、あの巨大すぎるゴーレムトルーパーの上で生活をしているのよ」


 シェーヴィル同盟の都市についてランに説明をするマリーであったが、当の本人は想像を絶する大きさのゴーレムトルーパーを目の当たりにして、驚きで固まっていた。

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