予想外の光景

「あれが例の合同部隊か……。本当にゴーレムトルーパーが四体もいやがる」


 男は自身のゴーレムトルーパーの操縦室の中でヴェルリ砦を「見下ろして」呟くと、暗黒領域から出てきた芋虫のモンスターの百を超える群れを見る。


 今ヴェルリ砦にいるゴーレムトルーパーは合同部隊のを含めて五体。普通に考えれば一国と戦えるだけの戦力なのだが、通常のモンスターよりも強力な暗黒領域のモンスターの大群相手では苦戦は免れないだろう。


 そこまで考えたところで男は、ヴェルリ砦の兵士達とはるばる救援に駆けつけた合同部隊が今頃どんな表情をしているのか想像して、ゴーレムトルーパーの操縦室の中で楽しそうに笑う。


「ハハッ! 今回は随分と出てきたな? 砦の奴ら一体どこまで戦えるんだろうな……って? あれは?」


 男はヴェルリ砦から竜の背中に騎士の上半身が生えた外見をした紺色のゴーレムトルーパーが一体だけ出て、芋虫のモンスターの大群に向かって行くのを見た。


「何だ、あのゴーレムトルーパーは? まさか一体だけであれだけのモンスターの大群と戦うつもりなのか?」


 疑問に思う男の視線の先で紺色のゴーレムトルーパーは、ヴェルリ砦から出てしばらく進むと立ち止まり、そのまま動かなくなった。一体あのゴーレムトルーパーは何がしたのかと男が首を傾げたその時、紺色のゴーレムトルーパーが行動を起こした。


『………!』


 紺色のゴーレムトルーパーの下半身の竜が両前脚を地面につけ、続いて両後脚の杭のような物で地面を突き刺す。そして機体が完全に地面に固定されると、下半身の竜の角や尻尾から光が見えはじめる。


 紺色のゴーレムトルーパーが下半身の竜の各所から光を放ち始めるのと同時に、男の乗るゴーレムトルーパーがエネルギーの増大とここにいては危険である事を感知して、自身の操縦室にアラームを鳴り響かせる。こんな事は男にとって初めての事であり、操縦室に鳴り響くアラームに男は冷や汗が浮かんでくるのが分かった。


「な、何だ? 何が起きるんだ? と、とりあえず逃げ……!?」


 異常を感じてこの場から立ち去ろうとした男だったが、その判断は少し遅かった。男が自分の乗るゴーレムトルーパーを操作しようとした瞬間、男の視界は強い光によって白く染まり、続けて襲ってきた衝撃によって男は意識を失った。




「………こ、ここは? 一体何処だ?」


 次に男が目を覚ました時、男が乗るゴーレムトルーパーはヴェルリ砦から遠く離れた暗黒領域の森の中であった。


「あの、ゴーレムトルーパーは……何なん、だ?」


 男は自分がヴェルリ砦からここまで飛ばされたのは、恐らくあの紺色のゴーレムトルーパーの仕業だろうと考えた。吹き飛ばされた衝撃で身体中が痛むのだが、それでも男はそう口にせずにはいられなかった。


 幸い男のゴーレムトルーパーには深刻なダメージはなく、男は自分の部下が待っている場所まで戻ると早速あの紺色のゴーレムトルーパーについて情報を調べる事にした。そしてそこで男は紺色のゴーレムトルーパー、ドランノーガの事を知ることとなる。


「ドランノーガ? フランメ王国の……『空を飛べる』ゴーレムトルーパーだと……!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る