騒ぎの予感

 サイ達がイーノ村に帰省していた頃、フランベルク三世は自分の執務室でアースレイと話をしていた。


「今頃サイ君達はイーノ村に着いた頃かな?」


「空を飛べるドランノーガとグレドプテラに乗って行ったんですからもう着いていると思いますよ。……それにしてもイーノ村か。僕、一度も行ったことがなかったからついて行きたかったな」


「それはまたの機会にな。サイ君達にはしばらく休むように言ったから、その間の国の守りは任せたぞ」


「了解。僕達もモンスターの駆除とか仕事はしていたけど、サイ君達程大仕事はしていないからね」


 アースレイは苦笑を浮かべてそう言うと、ふと思いついた顔となって口を開く。


「それにしてもサイ君達って、本当にトラブルに好かれていますよね。世界でも有名な盗賊団や大型モンスターの襲撃、他国で起こった内乱……。これだけの騒ぎを短期間で体験する人なんて普通いませんよ」


「確かにな。しかしそのお陰でサイ君は大きく昇進できたし、私としても新たなゴーレムトルーパーを得られた上に他国との同盟を築くことができた」


 フランベルク三世もアースレイの言葉に苦笑を浮かべて答える。この一年程の間にサイ達は普通の人なら一生かかっても体験できない体験を連続で体験しているのだが、それが彼らとフランメ王国に多くの利益を与えてくれたのもまた確かであった。


「でも、これ以上に騒ぎは流石にありませんよね?」


「どうだろうな? 国同士の戦いはともかく、大型モンスターの出現はあるかもしれないな。……まあ、私としてもこれ以上の騒ぎは起こらないでほしいな。せっかく姪が結婚するのだからね」


 どうかこれ以上の騒ぎが起こらないでほしいと話し合うアースレイとフランベルク三世。二人の会話は平和に生きたい人として当然の会話なのだが、この二人の会話が切っ掛けとなったのか、この後すぐに執務室に急報がもたらされた。


「陛下。いらっしゃいますか?」


「入りたまえ」


「はっ。失礼します」


 執務室の外から扉を叩く音と男の声が聞こえてきて、フランベルク三世が入室を許可すると、一人の軍人が入って来て敬礼をして用件を口にする。


「陛下。シェーヴィル同盟から使者の方が来られております。至急、陛下と会いたいとのことです」


「シェーヴィル同盟?」


 シェーヴィル同盟からの使者と聞いてフランベルク三世は少し意外そうな顔をする。フランメ王国と北に離れたシェーヴィル同盟は関係が薄く、これまで使者の類いが来たことがなかったからだ。


「その使者はどの様な用件で来たのかね?」


「分かりません。非常に重要な用件なので陛下にしか話すことができないと言われまして……」


 フランベルク三世に聞かれて答える軍人の言葉にアースレイは眉をひそめた。


(何だか、また騒ぎが起きそうな予感がするね?)

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