説得の準備
「四ヵ国会議の日時が決まったそうよ」
ドランノーガ、ドラトーラ、グレドプテラの三機の巡回任務が終わった日の翌日。サイの屋敷にやって来たクリスナーガが王宮からの報せを、屋敷の広間に集まったサイ達に告げた。
四ヵ国会議はフランメ王国、アックア公国、ソル帝国、アイゼン王国の同盟を組んだ四ヵ国同士の会議で、その内容はミスト王国への対処についてである。
「そうなんだ。それで何処で会議をするんだ?」
「ここよ」
サイの質問にクリスナーガは床を指差して答えた。
「フランメ王国で、ですか? いつかのようにソル帝国が自分の所じゃないとイヤだと駄々をこねると思っていたのですが」
まだ四ヵ国の同盟が成立する前、同盟についての会議をアックア公国で行われたのだが、その時ソル帝国は重要な会議なら自分達の所ですべきだと強く主張していた。その事をからかうようにピオンが言うと、クリスナーガは苦笑を浮かべた。
「ああ……。そんな話もあったわね。今回、フランメ王国で会議が行われるのは、ミスト王国との距離を考えてのことらしいわよ?」
四ヵ国としてはミスト王国への対処が決まり次第すぐに行動に移る予定らしい。元々ミスト王国は別の国への交戦意識が高い上に、アイゼン王国付近の暗黒領域での工作の件もあり、いつ暴発するか分からないのでそれを防ぐためだそうだ。
しかし一番ミスト王国に近いアイゼン王国で会議をすると、会議に気づいたミスト王国を刺激しすぎるかもしれないので、次に距離が近いフランメ王国で会議をする事が決まったのである。
「四ヵ国会議が行われるのなら、『キマイラ』の皆さんも集まるのですね。それで会議はいつ行われるのですか?」
「一ヶ月後の予定だそうよ」
共に行動する事で友人となることができたビークポッドやマリー、ジェラードの顔を思い出しながらブリジッタが訊ねると、クリスナーガは会議が行われる日時を教えてくれた。するとそれを聞いたサイが少し難しい顔となった。
「一ヶ月か……。それまでに俺も何か考えておいた方がいいかもな」
「考えるって、何をですか?」
「彼のことだよ」
「……」
首を傾げるブリジッタにサイは、同じ広間にいて話を聞いていたクリスライドを指差して答える。するとサイに指を刺されたクリスライドは申し訳なさそうに頭を小さく下げた。
「えっ? ……ああっ」
「そうだったわね。すっかり忘れていたわ」
サイの指摘にブリジッタとクリスナーガが今気付いたという表情となり、ピオンを初めとする四人のホムンクルスの女性達も似たような表情を浮かべていた。唯一、ブリジッタの隣に立つカーラだけは話を聞いているかも分からない無表情であったが。
クリスライドはアイゼン王国付近の暗黒領域での工作を行った張本人だ。しかし最近のサーシャへの求婚話等ですっかりサイ達の周囲に馴染んでいて、ついその事を忘れてしまっていた。
「クリスライド君を取り込むことを決めたのは陛下だし、それを他の国に認めさせる方法も考えてくれているだろうけど、俺達の方でも『キマイラ』の皆を説得する方法を考えておいたほうがいいだろう?」
そう言うサイの言葉に広間にいる全員が頷くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます