ジェラードの忠告

 それから一ヶ月後。クリスナーガから聞かされた報告通り、フランメ王国で四ヵ国の会議が行われることになった。


 それによってアックア公国、ソル帝国、アイゼン王国の上層部の者達、そして各国の「キマイラ」の隊員達がフランメ王国に集結した。そしてその中には当然、ビークポッドやジェラード、マリーの姿もあって、彼らはサイの屋敷にとやって来ていた。


「これは……」


「ウソだろ……」


「信じられない」


 サイの屋敷の広間でビークポッド、ジェラード、マリーの三人が驚いた表情でそれぞれ呟く。彼らの視線の先には、ある意味今回の四ヵ国会議が開かれる原因となったクリスライドの姿があった。


「サイから聞いた時は半信半疑だったが、本当に拘束もされずにサイの屋敷に居候をしているとは……」


「それにサイの妹さんに求婚して、フランベルク三世陛下は彼を『キマイラ』に取り込むつもりって……」


「色々とおかしいだろ」


 クリスライドについての話は屋敷に来る前にサイから聞いていたが、最初はそに話を信じられなかった。しかし実際に暗黒領域での時より明るくなった本人を見てビークポッドとマリーは思わず呟き、クリスライドが起こした騒動によって父親が怪我を負ったジェラードでさえ怒りを通り越して呆れたように言う。


「だから言っただろう? 陛下はクリスライド君とグレドプテラをミスト王国への追及だけじゃなく、その後は『キマイラ』の戦力として使うつもりで、本人もそれを受け入れている」


「いや、その理屈は分かったが……」


「ええ。確かにドランノーガ以外にも空を飛べるゴーレムトルーパーが増えたら、戦力は大きく上がるけど……」


 サイの言葉にビークポッドとマリーは頷き答えるが、その後でジェラードの方を見る。


 暗黒領域でクリスライドとグレドプテラが行った破壊工作でアイゼン王国が受けた被害はかなりのものであった。いくら彼がミスト王国から命令されただけだとしても、それをアイゼン王国の人間達が許せるのか不安だからだ。


 そう考えたのはビークポッドやマリーだけでなく、この場にいる全員の視線がジェラードに集まる。そして全員の視線を一身に受けた彼はやがて苛立たしげに頭をかいてから口を開く。


「あー……。俺も父上も軍人でゴーレムトルーパーのパイロットだ。だから戦いで死ぬのは覚悟している。それでクリスライドが今後は味方として戦うというのなら、俺からは何も言うことはない。きっと父上も同じだろう」


 ジェラードがそう言うとこの場にいる者達、特にクリスライドを初めとするミスト王国からの亡命組から安堵の息を出た。


「……ただし。これはあくまで俺個人の意見で、他のアイゼン王国出身の『キマイラ』がどう考えているかは知らん。信頼されたかったら、行動で示すしかないぞ?」


「はい。分かっています」


 その後ジェラードが言った忠告ともとれる言葉にクリスライドは真剣な表情で頷くだった。

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