サイの芸
巨大なゴーレムトルーパーの戦士の上半身、その根本の辺りに一際大きなテントがあり、そこがシェーヴィル同盟をまとめる長老達が集める会議場であった。
サイ達が会議場のテントに案内されると、そこにはすでにシェーヴィル同盟の長老達が彼らを待ち構えていた。
「ようこそいらっしゃった。異国から来た客人よ」
長老達の中で最も長命で威厳があるように見える一人がサイに挨拶をすると、今度は長老達の中で最も若そうな一人が苛立たしげに鼻を鳴らす。
「ふん! こんな見るからに頼りなさそうな若僧どもを寄越すとは、南の国々は今回の件の重要さを理解していないと見える」
「止めぬか、無礼であろう」
「何が無礼か。使者には今回の件は非常に重要なことだと伝えるよう念を押したはずなのに、こんな何の役にも立ちそうにない者共を送る方が無礼であろう」
長命の長老が止めようとするが若い長老は反論にて、他の長老達の何人も若い長老と同じ意見なのかサイ達を見下すような視線を向けていた。
「何かムカつきますね、この人達……。マスター、最近使えるようになった『一発芸』を見せたらどうですか?」
長老の見下すような視線にピオンが苛立ったように言うと、サイが焦ったように答える。
「えっ? 何でいきなり? というか一発芸ってアレか? ここで見せたら国際問題になるんじゃないか?」
「このままナメられたままだと、いつまで経っても話が進みませんよ。そちらの方が国際問題となるのでは?」
ピオンにそう言われてサイは今だにこちらを見下したように見てくる長老達を見て、次にピオンと同じ結論に至ったのか頷いて見せる仲間達を見て小さくため息を吐いた。
「はぁ……。あの、皆さん、ちょっといいですか? よろしければこちらをご覧ください」
そう言ってサイが自分の隣、何もない空間を指差して長老達の視線がそこに集まったことを確認すると指を鳴らした。すると次の瞬間……。
何もなかった空間に、突然巨大な戦士の像が現れ、光を放つ眼を長老達へと向けた。
「なっ!?」
「ひいぃっ!」
突然現れた戦士の像に睨まれた長老達は全員驚愕して、中には腰を抜かす者も出た。そんな長老達を見てサイは内心の冷や汗を気取られないように、いつも通りの表情を作って長老達に話しかける。
「これは俺のゴーレムトルーパー、ドランノーガの一部です。俺は異能で様々なものを異空間にしまって、好きな時に出すことができます。ちなみに異空間にはドランノーガを含めて五機のゴーレムトルーパーをしまっています」
『『……………!?』』
サイの言葉に長老達は全員息をのんだ。つまりそれはサイ達がその気になれば、このシェーヴィル同盟の都市の中央に突然五機のゴーレムトルーパーが出現するということで、これ以上彼らを挑発するのは命取りになると理解したからだ。
「俺達はフランメ王国、アックア公国、ソル帝国、アイゼン王国の四ヵ国より集められた特殊部隊『キマイラ』。俺達が送られたのは決して四ヵ国が貴方方シェーヴィル同盟を軽く見たわけではありません」
ドランノーガの一部を異空間にしまってから言うサイの言葉に、長老達は誰も反論することなく小さく頷いて答えるのであった。
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