本題

「いや、先程は失礼をした。この者も、今回の件の大きさについ過剰な反応をとってしまったようじゃ。儂等シェーヴィル同盟は決して貴方方を軽く見ているわけではない。それだけは信じてほしい」


「……」


 サイがドランノーガの一部を異空間に収納し直し、長老達が落ち着きを取り戻すと長命の長老がサイ達に謝罪をして、若い長老がそれに続いて頭を下げた。しかし若い長老は不満そうな顔を浮かべ、明らかにサイに対して敵意のある視線を向けており、それを見たピオンが目が笑っていない笑みを浮かべる。


(あら? あの長老さんってば、マスターの力を見てもまだ懲りていないみたいですね。ここは一つ、あの鼻をへし折ってあげる必要があるのでしょうか?)


《止めておいたほうがよろしいかと》


 ピオンが若い長老にどんな嫌がらせをしようかと考えていると、彼女の頭の中にヒルデの声が聞こえてきた。ピオン達、サイに従う四人のホムンクルスの女性達だけが使える「通心」の力である。


《ヒルデですか? 止めたほうがいいとは?》


《分かっているのでしょう? 確かにあの長老の態度には思うところがありますけど、これ以上貴女が何かをしたら私達の主人である愛しのマスターが責任を負うのですよ》


《でしょうね。貴女の言う通り分かっていますよ。思ってみただけですよ》


 ヒルデでの言葉にピオンはあっさりと引き下がる。だがピオンは若い長老に僅かな殺意を含んだ視線を送りながら「通心」の力でヒルデに言う。


《でも、あの長老がマスターに何かをしてきたら私は止まる気はありませんよ?》


《……そんなことがないように祈ってます》


 ピオンの言葉にヒルデが心の中でため息を吐く。すると長命の長老が本題に入ろうとしていた。


「さて、皆さんをお呼びした件なのですが……まずはこれを見てください」


 長命の長老はそう言うと、自分の前にあるテーブルの上に小さな板状の機械を置き、それを見たランが思わず声を上げる。


「それって録音機? ……あっ、すみません」


 声を上げたことにより周囲の視線がランに集まり、それをランが謝ると長命の長老は首を横に振った。


「いえいえ、謝罪は必要ありませんよ。しかしどうやら貴方方はこれが何か予想がついているようだ。……そう、これは貴方方の予想通り、人の言葉を保存して何度でも聞くことができる道具なのです」


 正確には板状の機械の予想がついているのはランだけなのだが、サイ達はそれを言うことなく黙っていると、長命の長老は板状の機械を操作した。すると板状の機械は聞き覚えのない男の声で話し始めた。


『地上の皆さん。初めまして。まず最初に、私達は宇宙……空の遥か上に暮らす者です』

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