紺と真紅の模擬戦(2)
「まさかカロル・ディギトゥスが一発も、掠りもしないなんて……! 噂以上のスピードだな」
ドランノーガの攻撃が全て躱されたのを見てサイが驚きの声を上げると、操縦室に通信でフランベルク三世の声が聞こえてきた。
『フッ。この程度で驚いてもらっては困るぞ? リードブルム!』
『……!』
フランベルク三世の声に応えてリードブルムの下半身の竜の翼、脚部から噴き出ている炎の出力が上がり、それによって真紅のゴーレムトルーパーの速度が更に上昇して音速の壁を突破した。音速を超える速度を得たリードブルムはドランノーガの周囲を縦横無尽に駆け回り、その動きはナノマシンで動体視力を強化されているサイ達でも捉えるのが困難なほどであった。
「今のリードブルムの速度は音速の二倍近く……大体空を飛んでいるドランノーガと同じくらいですね」
「そうなのか? なんか地面を走っている向こうの方が速く感じるんだけど?」
『おしゃべりはそこまでだ。そろそろ仕掛けさせてもらうぞ?』
リードブルムの速度や動きを測定したピオンの言葉にサイがそう返した時、再びドランノーガの操縦室に通信でフランベルク三世の声が聞こえてきた。それを聞いたサイ達がリードブルムの姿を探すと、真紅のゴーレムトルーパーはドランノーガから離れた所でいつでも突撃できる体勢をとっていたのだが、その姿は先程とは若干異なっていた。
変化が見えたのはリードブルムの下半身の竜。竜の両翼は片刃の剣のような外見に変形していて、頭部はいつでも噛みつけるように口を開いて鋼鉄の牙を覗かせていた。
しかも変化はそれだけでなく、リードブルムの下半身の竜の牙と翼からは、熱せられた鉄のような光が放たれていて、それを見たサイは考えるよりも先にドランノーガに命令を出した。
「……!? ドランノーガ、飛べ!」
「マスター、何を!?」
『………!』
サイが突然の自分の行動に驚くピオンの声を聞きながら、自らの直感に従って自分達が乗っているゴーレムトルーパーに指示を出すと、ドランノーガは両後脚の噴出口から炎を噴き出して飛翔した。すると次の瞬間、上空へ飛んだドランノーガの下で真紅の風が吹いた。
『ほう? 躱したか』
『『……………!?』』
通信から聞こえてくるフランベルク三世の言葉を聞いてサイ達が下を確認すると、先程までドランノーガがいた場所には真紅のゴーレムトルーパー、リードブルムの姿が見えた。超高熱となったリードブルムの牙と翼は突撃した際の空気抵抗で炎を纏っていて、その姿は伝説に登場する火竜そのものであった。
これこそがリードブルムの本来の姿。
竜の翼と脚部から炎を噴き出して得た加速で戦場を縦横無尽に駆け回り、炎の刃と化した竜の牙と翼でモンスターを、敵のゴーレムトルーパーを燃やし尽くす。
それ故についた異名が「烈火の竜騎士」。
以前ピオンは、遠距離用の武装と重装甲を捨てて高速戦闘に特化した現代のゴーレムトルーパーは前文明時代のゴーレムトルーパーと比べて大きく弱体化したと断言した。しかしリードブルムの場合は高速戦闘に特化したことによって、前文明時代のゴーレムトルーパーに劣らぬ戦闘力を得ていたのだった。
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