紺と真紅の模擬戦(1)
「リードブルム……。こうして見ると強そうですね」
ドランノーガの操縦席の中で、操縦室の前方の壁に映し出されるリードブルムの姿を見ながら言うと、それにサイが頷く。
「強そう、じゃなくて強いんだよ、リードブルムは。俺が知る限り陛下が乗るリードブルムは連戦連勝のゴーレムトルーパーで、他国から『烈火の竜騎士』と呼ばれて恐れられているそうだ」
リードブルムを見ながら言うサイの瞳には相変わらずの憧れの光が宿っており、それを横目で見てピオンがため息混じりに己の主人である青年に話しかける。
「マスター、いくらリードブルムが憧れの機体といっても……」
「ああ、分かっている」
ピオンの言葉をサイがリードブルムを見ながら遮る。
「確かにリードブルムは俺の、いや、フランメ王国の男全ての憧れで強力なゴーレムトルーパーだ。だけど俺達のドランノーガだっては負けてはいない。……そうだろ、皆?」
『『はい!』』
サイの言葉にピオンと操縦室の壁に映し出された小画面の中にいるヴィヴィアン、ヒルデ、ローゼが同時に頷き返事をして、それを聞いたホムンクルス達の主人でもある青年もまた頷いた。
「さて……。そろそろ模擬戦か」
そう呟くとサイはドランノーガの前方にいるリードブルムに意識を集中させた。
「そろそろ開始かの」
ジェノバイクの操縦席の中で相対するドランノーガとリードブルムを見ながらクリストファーが一人呟く。彼は今回の模擬戦の審判役であった。
クリストファーはドランノーガとリードブルムの様子を見て双方とも模擬戦の準備が出来ていると判断すると、自分の声を大音量にして外部に伝える機能を使って模擬戦の開始を告げた。
「それでは……模擬戦、開始!」
『『………!』』
クリストファーの開始の合図を聞いてドランノーガとリードブルムの両機が同時に動き出した。
『…………………………!』
最初に攻撃を開始したのはドランノーガ。ドランノーガは上半身の騎士の両腕から火の玉を発射する武装「カロル・ディギトゥス」を使用して、リードブルムに向けて無数の火の玉を放った。
しかしリードブルムは大きく横に跳ぶとドランノーガが放った火の玉を回避すると、そのまま高速で走り出す。
ドランノーガの「カロル・ディギトゥス」の火の玉の放出はまだ終わっておらず、高速で走るリードブルムを追撃するが、その時リードブルムの機体に変化が起こる。
『………』
リードブルムの下半身の竜が翼を広げたかと思うと、翼から炎を噴き出してそれによってリードブルムが加速して、ドランノーガが放つ無数の火の玉を置き去りにして草原を縦横無尽に走り回る。そしてドランノーガの「カロル・ディギトゥス」の放出は無制限ではなく、やがて「カロル・ディギトゥス」の放出が終わると真紅のゴーレムトルーパーは反撃に転じるべく紺色のゴーレムトルーパーに向かって突撃をする。
「ドランノーガの遠距離攻撃、実際に見てみるととんでもないのぉ……。しかし陛下のリードブルムも流石じゃな。『最速』の名は伊達ではないということか」
その様子をジェノバイクの操縦席の中で見ていたクリストファーは感心したように呟いた。
高速で大地を駆け回り無数の火の玉を避け切ったリードブルムには「烈火の竜騎士」の他にもう一つの異名がある。
そのもう一つの異名は「最速で駆けるもの」。
下半身の竜の翼から、そして脚部から炎を噴き出して加速を得るリードブルムは、フランメ王国だけでなく近隣の国々にある全てのゴーレムトルーパーの中で最速であり、現代において「巨体でありながら高速で地を駆ける兵器」とされるゴーレムトルーパーを代表する機体と言えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます