王都を忍び歩く者達
ジェラード達がノルド達と話していた頃、サイとピオン、ヒルデとローゼ、そしてクリスライドの五人はミスト王国の王都の路地裏を歩いていた。
「やっぱり今外を歩いているのは国王配下の軍人だけか……」
サイは路地裏から大通りを歩いているミスト王国の軍人達の姿を相手に気付かれないように見て呟く。続いてここから辛うじて見える巨大な影、ミスト王国の国王が乗るゴーレムトルーパーの姿を視界に入れて顔を僅かに歪める。
「それにしても……ゴーレムトルーパーを王都の中央に置くとか何を考えているんだ?」
現代のゴーレムトルーパーの武装は全て格闘戦の武装ばかりである。だからもしノルドが王都の被害を無視してミスト王国の国王と戦う決断を下したら、この王都は二体のゴーレムトルーパーの戦いによって跡形も無くなるだろう。
「おい、ピオン? ジェラード達の方はどうなっている? ヴィヴィアンから連絡はなかったか?」
「はい。少々お持ちください」
王都で二体のゴーレムトルーパーが戦い合うという最悪の未来を想像して僅かに体を震わせるサイがピオンに質問をすると、彼女は「通心」の力を使ってジェラード達と共にいるヴィヴィアンと話し合ってからサイに頷いてみせた。
「……ええ。大丈夫です、マスター。ノルド将軍もいきなりの話に驚いたそうですけど、とりあえずは私達の行動の結果を待ってくれるそうです」
「そうか。それはよかった。クリスライド君、次はどっちの道を行ったらいいんだ?」
「はい。こっちの道を行けば近道なんですけど、ヒルデさんどうですか?」
「……はい。今その道には兵士はおりません」
ピオンの言葉に安堵の表情を浮かべたサイが唯一王都の道を知るクリスライドに道を訊ねると、クリスライドが国王のゴーレムトルーパーがいる場所への道を示して、ヒルデの「探知」の異能でミスト王国の軍人かいないか確認してから進む。
そしてそれからしばらくして大分国王のゴーレムトルーパーがいる場所まで近づくと、サイが気が重いとばかりに呟く。
「それにしてもマリーも無茶苦茶言うよな……。よりにもよってあんな作戦を考えて……」
「何を言っているんですか、マスター? マスターの異能を使った画期的かつ効果的な作戦じゃないですか」
「そうですよ、お義兄さん。マリーさんの作戦が成功したら、この内乱もすぐに終わって、あのクソ親父……ミスト王国の国王だって必ず度肝を抜かれますよ」
サイの呟きにピオンとクリスライドの二人が即座に反論して、それに対してサイは苦笑いを返すことしかできなかった。
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