事後承諾の作戦

 ミスト王国の王都から少し離れた山に五体のゴーレムトルーパーが集まっていた。一体はミスト王国に所属しているノルドのゴーレムトルーパーで、残りの四機はドランノーガ、ザウレード、ヴォルダート、あるダニアンの「キマイラ」に所属しているゴーレムトルーパーであった。


 そして五機のゴーレムトルーパーの足元では、それらの操縦士「六人」が顔を合わせて会話をしていた。


「初めまして、ノルド将軍。貴方のことは父上から聞いております。ミスト王国の歴戦の勇者とこうして会えて光栄です」」


 最初に話しかけたのはジェラードだった。実際に何度もノルドと戦ったことがある父親から話を聞いていたジェラードが素直に称賛の気持ちを込めて言うと、ノルドは柔らかな笑みを浮かべて返事をする。


「こちらこそ。君のことは噂で聞いているよ。君のような若く優秀な軍人を得て、ジャック殿とアイゼン王国が本当に羨ましいよ」


 ジャックとはジェラードの父親の名前であり、これまで何度もゴーレムトルーパーに乗って殺し合った相手の息子と和やかに話すノルドの姿に、それまで緊張した様子で見守っていたミスト王国の兵士達の気配が和らいでいった。そして周囲にいる部下達の敵意がなくなったのを確認してからノルドは改めてジェラード達に話しかける。


「それで君達は一体どうしてここまで来たのかな? ゴーレムトルーパー四機も引き連れて単に観光をしに来たわけじゃないんだろう?」


「はい。今回俺達はアイゼン王国、フランメ王国、アックア公国、ソル帝国の四ヵ国の命令でミスト王国の内乱を解決する手助けに来ました」


『『………』』


 真剣な表情となったノルドの言葉に同じく真剣な表情となったジェラードの返答は予想していた通りのものであったが、実際に言われるとやはりと言うべきかミスト王国の軍人達の間に緊張が走った。


「……そうか。それで? 内乱が終わった後、我がミスト王国は四ヵ国の支配下に置かれると言うことか?」


「いえ、違います。四ヵ国はミスト王国を支配下に置く気はありません。ただ先日の破壊工作等の件の賠償などは求めていますが、それらの話し合いのためにも早くこの内乱を終わらせるために俺達を送ったのです」


(若いな……。支配下に置く気はないと言っても、その賠償の内容次第で支配下になるのも同然だろうに……)


 ノルドは自分の言葉に慌ててそう言うジェラードを見ながら心の中でそう呟いた。しかし自分達にはもう四ヵ国の提案に乗るしか選択肢がないと理解しているノルドは、それを声に出すことなくジェラードに頷いてみせた。


「成る程、了解した。……それで? 君達にはあの王都の中央に居座っている国王を何とかする手段があるのかね? あるとしたら私達に何か手伝えることはないかね?」


「あー……。それが実はもう実行しているんですよね……。ミスト王国の国王をどうにかする作戦……」


 ジェラードはそこでバツの悪そうな表情となってノルドの言葉に答えると、ドランノーガの足元に「一人だけいる」ヴィヴィアンに視線を向けるのだった。

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