結果報告
「……それでミスト王国の軍人達を捕まえたってことか」
アイゼン王国の王都の観光を終えて宿泊用の建物に帰ってきたサイは、自分より遅れて帰ってきたピオンの話を聞いて思わず手を額に当てて呟いた。建物の部屋にはサイとピオンの他に、ヴィヴィアンとヒルデにローゼ、ブリジッタとクリスナーガにカーラもいて、ブリジッタとクリスナーガの二人も自分達の婚約者と似たような表情で苦笑を浮かべている。
今日、サイは婚約者二人と従者のホムンクルスの女性四人で観光や買い物を楽しんでいた。しかしその裏では、ピオンが自分の身を囮にすることでミスト王国の軍人達を誘き出してわざと捕まり、それからミスト王国の軍人達を一人で全員捕らえたらしいのだ。
捕まえたミスト王国の軍人達はすでにアイゼン王国に引き渡しており、報告を全て終えてから宿泊用の建物に帰ってきたピオンから全てを聞いたサイは、呆れればいいのか怒ればいいのか分からない複雑な気分であった。しかし少し考えてからサイは自分が何をすればいいのか、すぐに決めることができた。
「……ピオン」
「はい。どうかしましたか、マスター?」
サイは額に当てていた手をどけると真っ直ぐにピオンを見て話しかける。
ここで勝手に単独行動をした従者に対して主人がとるべき行動は一つ。説教だ。
「今回の様な勝手なマネはもうするな。やるならせめて俺に前もって言え。いいな?」
「え? でも今回のはマスターにくつろいでもらおうと……」
「いいな」
「………はい」
ピオンの抗議の声を遮ってサイが念を押して言うと、赤紫色の髪の少女は顔を俯かせてしぶしぶと返事をした。
今回の件で分かったが、ピオンは敵の命だけでなく自分自身の命にも全く興味がないようだ。
以前、サイがドランノーガをゴーレムオーブから作ったばかりの頃、彼女はゴーレムトルーパーの自己進化機能を利用して自分をドランノーガのシステムに組み込むために、自分からドランノーガに食べられたことがあった。その時のことを思い出してサイは、今まで以上にピオンに注意するべきだと決めた。
「……それで? ミスト王国の軍人達を捕まえて何か新しく分かった事はあるか?」
「あっ、ハイ。捕まえたミスト王国の軍人達が『とても協力的』に話してくれたので、クリスライド君も知らなかったあの暗黒領域での計画のことや、ミスト王国から彼とグレドプテラを回収するための救援が来ることも分かりました」
「そうか」
ピオンの言葉を聞いてサイは、やはりミスト王国はグレドプテラを諦めていないのかと思う。しかしミスト王国から新たな軍人が来ることが分かっていれば、対策が立てられるとも思った。
「ありがとう、ピオン。お陰で色々と助かった。……ああ、それと」
「はい?」
「その服、似合っているぞ」
今のピオンは今日買ったばかりのワンピースを着ており、サイが一人でミスト王国の軍人達から情報を仕入れてくれたことへ礼を言ってから彼女の服を褒めると、ピオンは満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。マスター」
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